ブランドウォッチング

「マルちゃん 赤いたぬき天うどん」 定番ブランドの領土死守する一手 (3/3ページ)

秋月涼佑
秋月涼佑

 そう、今回新発売となった「マルちゃん 赤いたぬき天うどん」には、そんな「新鮮さ」を求めるコンビニバイヤーと自ブランドの「アイデンティティーを守りたい」メーカーとの熱き意地と意地とのぶつかり合いが生んだ、コペルニクス的なソリューションを感じるのです。

 ブランドのアイデンティティー守りながら新鮮さ演出

 あらためて「赤いたぬき」のパッケージを見ますと、“きつね”→“たぬき”など若干の変更はあるものの見事なまでに「赤いきつね」です。要はデザインスキームが見事なまでに従来品通りなのです。また、「赤いきつね」の味わいを担保しつつ「緑のたぬき」のシンボル的具材である小えび天ぷら(=たぬき)を加える。もちろんこれは手抜きなどではありません。ファンから愛されているブランドへの信頼を裏切らずに、新しい体験を提供するためのこだわりなのです。

 食べてみると、やはり商品としての完成度は非常に高く、私の小学生の娘でさえ、「そうそう、私はもともとこの組み合わせがベストだと思ってたのよねー」と大騒ぎしていました。まさに定番性を崩さずに、新鮮さを出すという離れ業をやってのけているのです。

 「緑のたぬき」と「赤いきつね」のどちらが好きか投票をさせてから、勝利記念としての新発売という巻き込み型のプロモーション手法も教科書にしたいような分かりやすさと鮮やかさでした。

 販売も好調なようですし、まずは惜しみない拍手をさせていただきたいと思います。余計な心配をすれば、同じ手法が新手として二度は使えないことかもしれませんが、これはあまりに開発担当者の次の苦労を知り過ぎている私の職業病だと思います。

秋月涼佑(あきづき・りょうすけ)
秋月涼佑(あきづき・りょうすけ) ブランドプロデューサー
大手広告代理店で様々なクライアントを担当。商品開発(コンセプト、パッケージデザイン、ネーミング等の開発)に多く関わる。現在、独立してブランドプロデューサーとして活躍中。ライフスタイルからマーケティング、ビジネス、政治経済まで硬軟幅の広い執筆活動にも注力中。
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【ブランドウォッチング】は秋月涼佑さんが話題の商品の市場背景や開発意図について専門家の視点で解説する連載コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら

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