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スバルが米国で過去最高を更新できるワケ 「客が変わった」の深層 (2/3ページ)

アイサイト誕生で「スバルに来なかった客」まで増えた

 「客が変わった」という話は、日本でも聞こえてくる。

 「アイサイト」が2008年に装備されるようになり、「ぶつからないクルマ」というイメージができてから、スバルの客層は明らかに変わってきた。ちょうどその頃、販売店に出向していた元社員で現在は広告関係の会社にいる人間はこんな体験をしている。

 「スバルの本社に入って販売店に3年間、出向していました。それまでスバルのディーラーに来る人って、『なんとなく』という人はいなかったのです。それぞれの理由があって、スバルを買いに来ていました。『父親が乗っていた。スキーやキャンプが好き、走りが好き、四輪駆動の車が欲しい』。まったくの新しい顧客はほとんどいなかった。昔からスバルに乗っていた人が何度も買い替えるケースがほとんどだったのです」

 つまり、買い替え需要だけに頼っていたのである。そして、買い替え需要しかなかったのはスバルのセールスマンにとっては決して悪いことではなかった。トヨタの販売店ならば買わなくてもやってくる人はいる。しかし、スバル販売店に来る人はイコール、スバルを買う人だった。

 「そうです。販売店の売り上げもだいたい予想できました。僕らは店に来てくれる客を自銘(柄)の客とか自銘代替えの客と呼んでいました。対して、他社に乗っていた客が買い替えてくれた場合は他銘(柄)の客と呼んでいました。でも、はっきり言うとスバルの場合、他銘の客って、ほとんどいなかったんですよ。

 ところがアイサイトが出てから、他銘の客が増えてきました。例えば前はドイツ車に乗っていて、アウディやフォルクスワーゲンからスバルに変える客が出てきたんです。そして、来店するのが多くなったのがママたち。小さな子どものいるママたちが『アイサイトの車を見たい』と販売店にやってくるようになりました」

クルマ好きの車から、子どもを守ってくれる車へ

 スバル360の発売以来、同社の客は「クルマの走りが好きな人たち」だった。水平対向エンジン独特の音、地面にびたっと吸い付いて走る安定感、雪道でもすべりもせずに前進していく心地よさ……。走行性能、操作性に感性が合う人たちが客だった。

 ところが、アイサイトが装備されて以降、チャイルドシートに乗せた子どものためにスバルを買う層が出現した。

 赤ん坊のいる夫婦がいる。ダンナは「ドイツ車が欲しい」と言う。しかし、妻はきっぱり、首を振って告げる。

 「あなた、子どものことを考えて」

 赤ん坊や小さな子どもがいる家庭の場合、車を買う決定権を持っているのはダンナではない。妻と子どもだ。はっきり言えば妻だ。妻たちは車のデザインは気にするけれど、スピードや環境対応はあまり気にならない。それよりも、子どもにとって安全な車を選ぶ。彼女たちが必要とするのはぶつからない車であり、ぶつかっても、乗員を守ってくれる車だ。

 こういうところから考えてみると、ママたちはパワートレインがエンジンなのかEVなのかといった点はどうでもいいと思っているのではないか。

 運転しなくてもいいこと。ハンドルでなくスマホで操作できる車であること。いつもネットワークとつながるコネクティッドカーであること……。さまざまな便利さがユーザーをひきつけていくと思われる。

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