高論卓説

過熱する採用市場 売り手有利で陥る自己の過大評価 (1/2ページ)

 企業の人材採用に対する悩みは深刻だ。募集しても思うように人材は集まらず、費用や労力の負担が大きい。人工知能(AI)や「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」などのデジタル技術を活用し、限定された要員で業務を行う取り組みは進められている。だが、事業や業務の方向性を決めて計画を立てるのは人であり、重要な意思決定を全てITに任せることはできない。

 新卒・中途を問わず人材を紹介・斡旋(あっせん)する企業は以前よりも増えた。活用するのは募集する側の企業だけでない。求職者にとっても就業や転職の機会が開かれてきた。ネットを使い今よりも好条件だと思われる職場を検索することができる。

 企業にとっては、優秀な人材が辞めないよう、つなぎとめることも重要な課題だ。社員を「生かしたいスキルがあるのに、今の職場では生かせない」「給与が見合わない」などの状態のまま放置すると、離職されるリスクが高まる。「辞めます」と言われてから引きとめても手遅れ。企業には、これまで以上に「職場を魅力的にする」努力が問われる。

 日本企業は、同じ職場で長い時間過ごす中で人間関係を築くことが多い。だが、デジタルの発達により、人間同士のリアルなコミュニケーションは希薄になる傾向にある。特に世代間のギャップは深刻だ。

 この過熱した環境では、若手社員が勘違いすることにも危機感を抱く。

 十分なスキルや経験を身につけていなくても、転職によってそれなりの処遇を手に入れることができてしまう。新しい職場に入っても、気に入らなければ次の転職の準備に入る。その職場で身につけるべき知識や経験を得ていないにもかかわらず、だ。

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