持続可能な漁業で獲られた水産物「サステナブル・シーフード」の普及に取り組む企業が増えている。パナソニックは社員食堂での継続的導入にあわせ、生産者から給食会社までのサプライチェーン(供給網)を整備して他社にも採用を促す。さらに検討企業を含めたネットワークを立ち上げ、賛同の輪を広げる考えだ。社食に導入済みの損害保険ジャパン日本興亜は、今夏の学生向け環境インターンシップ(就業体験)を啓蒙(けいもう)活動の場として活用し、学生を普及の担い手として育成する。
認知度向上に注力
「今では『サスシー』と呼ばれるほど社員間で認知度が高まり、毎回のように売り切れる」
パナソニックの喜納厚介CSR・社会文化部課長はこう語り喜びを隠さない。「最初は『おいしかった』『盛り付けもすてきだった』と選んでもらい、社会的価値を理解するのは後でいい」という戦略が奏功したからだ。
水産資源が乱獲と海洋汚染で危機的状況にあることを知らせるため、昨年3月に日本企業で初めて社食のメニューにサステナブル・シーフードを採用。それ以来、月1回の提供時にはメニュー展示付近や料理受け渡し口などに国際認証である「MSC(対象は天然の水産物)」「ASC(養殖水産物)」のマークが付いた幟(のぼり)やパネルを並べて認知度向上に注力している。
魚料理が敬遠されがちな中、人気食材と組み合わせたり、女性視点を重視し見た目で選びたくなるメニューを開発したりしてアピール。人気メニューのバロメーターといわれる選択率20%を大きく上回る支持を得ている。導入拠点は21に増え、来年には約100カ所ある国内全拠点に広げる予定だ。
サステナブル・シーフードを選ぶ意義を知った社員は、スーパーなどで水産物を購入するとき認証マークが付いた水産物を選び、友人などにも紹介するようになった。ただ約10万人の社員を総動員し社外に購入を呼び掛けても消費の変革というムーブメントを起こすのは難しい。
そこでパナソニックは社食の運営を委託する給食会社に協力を要請した。社食で提供される水産物がサステナブル・シーフードと認められるには生産者から加工・流通業者、給食会社までの全過程で認証を取得しなければならないからだ。
給食会社で真っ先に応えたのが大手のエームサービス(東京都港区)で、環境配慮企業として認められるには認証取得が必要と判断した。これを機にサステナブル・シーフード普及の意義を理解した7社が認証を取得、このうち6社はパナソニックが「口説いた」(喜納氏)。同時に、他社に社食での採用を呼び掛け、日立製作所やデンソー、JXTGホールディングスなどが受け入れた。三井住友海上火災保険も7月、導入を決めた。