それほど「丸もうけ」でない お布施、戒律… ありがちな誤解
「坊主丸もうけ」など、世間からケチョンケチョンに言われることが多いお寺や僧侶。でも、誤解も多い。寺や僧侶が受けがちな誤解についてまとめてみた。
「布施」や「戒名料」といったお金は、税務上は僧侶の収入にはならない。『宗教法人』であるお寺の会計に入ることになる。そして、そこには税金はかからない。「お守り代金」「賽銭(さいせん)」なども同様に扱われる。お寺の土地などにかかる固定資産税も免除されている。
税金がかからない根拠は、(1)憲法が「信教の自由」を保障している(2)活動に「公益性」がある(3)布施や戒名料は、「売り上げ」ではなく「宗教行為」である、といったところに求められる。
一方、「月極駐車場」や「自動販売機」、宗教法人本来の活動に資さない「物販」収入に対しては法人税がかかる。宗教法人への税務署の立ち入りも、一般企業同様に行われている。
▽お坊さん個人の給料は課税対象 誤解を受けやすいのだが、お坊さんが寺から受け取る収入(給料)は、サラリーマン同様に税金がかかっている。お坊さんも所得税、住民税などは払っているのだ。個人的に使っている乗用車関係の税金も全部払うことになる。
地方の寺などは檀家も少なく、苦しい寺院経営を迫られている僧侶が圧倒的だ。一方で、少数派ではあるが、檀家が多く裕福な寺の僧侶の中には、銀座や祇園で豪遊するなどぜいたくな暮らしをしている者がいることも事実だ。趣味で乗る車を、個人所有ではなく、宗教法人の所有にしているケースもあるようだ。
▽飲み食い、妻帯、長髪はなぜ? 僧侶の「肉食妻帯」を認めたのは明治政府だった。1872(明治5)年、「自今僧侶肉食妻帯蓄髪等可為勝手事」(今より僧侶の肉食・妻帯・蓄髪は勝手たるべき事)という太政官布告が出された。僧侶の世俗化を進めることで、明治政府が仏教の弱体化を狙ったとされる。それ以来、僧侶の肉食妻帯が公然と始まったようだ。
ただ、浄土真宗では、開祖親鸞の生き方に倣って、江戸時代以前も「肉食妻帯」だった。親鸞は「肉食妻帯をしている全ての人が本当の幸せになれる」ことを明らかにするため、自ら肉食妻帯をしたという。浄土真宗では、髪を伸ばしている僧侶も多い。
仏教を世界的にみると、飲酒、肉食をするのは日本の僧侶だけ。そのため、2018年に、日本で世界の仏教者による会議が開かれた際には、酒抜き、肉抜きでレセプションが開かれている。会場には当然「般若湯」(酒をこっそり飲むための隠語)もなかった。(『終活読本ソナエ』2019年夏号から、随時掲載)