会社が債務超過であっても、事業に収益力(継続的に一定の利益を上げる力)があれば、適正な対価で事業譲渡して、残った会社を清算する(第二会社方式)という方途もある。金融機関に対する連帯保証債務も「経営者保証に関するガイドライン」を活用して、一定の資産を残して免除を受ける道もある。
M&A市場は活況となりつつある状況下で、アドバイザー、会計士、弁護士といった売り手側を支援する専門家も増えてきており、適切なアドバイスやサポートを受けやすくなっている。
少子高齢化による人口減少、市場や消費者ニーズの多様化などにより、経営環境が厳しくなっている昨今、経営の意欲、覚悟と適性のある後継者を得ることが難しくなっていることは否めない。会社を継ぐ意欲や能力がある親族がいたとしても、本人と事業存続のために、社長に適しているかどうかをシビアに見極めることは必要だ。「適材適所」という言葉もある。最近では、オーナー社長が親族を自社の社員として受け入れながら、社長職を継がせずに、第三者に経営権を譲渡する事例を耳にすることが多い。
◇
【プロフィル】堂野達之
どうの・たつゆき 東大法卒。2000年4月弁護士登録(東京弁護士会所属)。17年1月から現職。企業経営の総合支援を柱に据え、企業の誕生・成長・発展・再生・承継・終焉・第二創業のライフサイクルに密に関わり、特に事業再生と事業承継の案件に数多く取り組む。著書は「特定調停手続の新運用の実務」(共著)など。47歳。神奈川県出身。