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なぜデンマークは、消費税が25%でも軽減税率を導入しないのか (4/6ページ)

 弱者救済は消費税の枠組みを取り払って考える

 そして5で説明されているように、効率的な増税対策は社会保障給付だ。これは低所得者に対する医療費や教育費等の引き下げによる還元なのか、直接的な現金の支給なのか、それとも所得税や社会保険料の軽減なのか、やり方はさまざまだがどのやり方でも軽減税率より確実に効率がいい。所得の低い人に限定して還元できることや、事業者に無駄な手間が生まれない事も極めて大きなメリットだ。

 軽減税率の線引きはややこしいかもしれないけれど、生活必需品の税率を下げるのは当然では? と考えている人も多いだろう。しかし、消費税の枠組みの範囲内だけでバランスを取ろうとすれば、手間がかかる上に高所得者にも多額の還元がなされると説明した通り、ゆがみが生まれる。

 EUでは主に食品・医療品・書籍が対象となるケースが多いようだが、何が生活必需品か決めるのは政治家ではない。個々の自由な判断に赤の他人が干渉、介入することは可能な限り避けるべきだ。これは大げさにいえば民主主義の根幹でもある。この大原則をオムツや生理用品も軽減税率に含めるべきと主張している人は忘れている。

 オムツが認められれば布オムツが、布オムツが認められれば赤ちゃん用の洋服からタオル、はては玩具やベッドなどのベビー用品全般まで、権利の主張は広がる事は目に見えている。まさに泥沼だ。

 食品でいえば、持ち帰りと店内の線引きですらヤヤコシイため、当然のことながら、食品の中でも贅沢(ぜいたく)品とそうでないものを区分けするのはまったく現実的ではない。スーパーで買い物のたびに、低所得者だけが還元を受けるといったやり方はもっと現実的ではない。結局一番手間のかからない対応は所得に応じた現金の還元だ。

 直接還元は振込一回で終わる

 例えば年収300万円、そのうち半分の150万円を消費に使っている人ならば、2%増税の負担増はおおよそ3万円だ。これが過大な負担で全額免除すべきという事なら3万円の現金を振り込むか、所得税を減らせばいい。

 どちらがいいかは事務コストを比較して選べばいい。全国で数百万、数千万人にこういった対応をすればそれなりの手間だが、軽減税率に比べれば極めて低コストで事業者の負担もない。

 それでも政府与党は軽減税率がいいというのであれば、高所得者がデパートでキャビアを買う際に税率を下げる必要はあるのか? 低所得者がマックでハンバーガーを食べたり松屋で牛丼を食べたりする際に、キャビアよりも高い税率をかける合理性はあるのか? 食品は生活必需品であることは間違いないが、年収1億円の高所得者に軽減税率は必要か? この問いに合理的に答える必要がある。

 物理的な影響よりも心理的な影響、いわゆる痛税感に考慮しているというのであれば、それは全国の飲食店、小売店、そして税務署が対応に追われる手間とコストを天秤(てんびん)にかけて、それでもなお心理的な影響の方が大きいといえるのか? この問いに答える義務がある。

 消費税の引き上げについては賛否が分かれてもおかしいと思わないが、「軽減税率が増税対策として他のどんな手法よりも優れた手法である」と考えることは、考え方や立場の違いではなく、単に合理的な考え方ができていないか、政治家がパフォーマンスを目立つ形でアピールしたいだけの話だ。

 結論としては「高所得者は所得税が高くて大変だから、手間とコストをかけてもいいから軽減税率で還元してもいいじゃないか」という人だけが軽減税率に賛成すればいい。軽減税率に賛成する人、政党、政治家は金持ちの味方だと公言しているに等しい。

 オムツや生理用品も軽減税率に含めろという主張も、軽減税率を認めているので金持ちの味方だ。筆者が突然、軽減税率はいい制度だと言い始めたら、コイツもうかってるなと思ってもらって間違いない。

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