しかし、そのタイミングは難題だ。それでなくとも銀行預金の金利はすずめの涙で、日銀が超低金利政策を敷いて以降、個人・家計が失った“得べかりし利益”(逸失利益)は膨大である。導入を焦れば預金者の反発は必至であり、「銀行のエゴ」と批判を浴びかねない。
全国銀行協会の高島誠会長も「お客さまに対して付加価値の高いサービスを提供し、ご理解をいただいた上で、必要な手数料を頂戴していくということが、引き続き基本的な考え」とした上で、「マイナス金利の導入が従来の銀行の手数料体系見直しの契機になったということはあるかもしれないが、本来これらは別物である」と答えている。
また、全国地方銀行協会の笹島律夫会長も、「(口座維持・管理手数料は)必ずしも金融政策とひもつきで論じるものではない」としている。
だが、この言葉を裏読みすれば、「日銀の政策いかんにかかわらず、必要な段階には粛々と口座維持・管理手数料を導入させていただきます」ということであろう。
確かに、セキュリティー対策やキャッシュレスの高度化などで口座維持・管理コストは年々増加している。そのコストに見合う手数料を徴求するのは正論であろう。しかし、本音でいえば、銀行がこれまでのように無料でサービスを提供する余裕がなくなってきているということではなかろうか。
【プロフィル】森岡英樹(もりおか・ひでき)
ジャーナリスト。早大卒。経済紙記者、米国のコンサルタント会社アドバイザー、埼玉県芸術文化振興財団常務理事を経て2004年に独立。福岡県出身。