山本隆三の快刀乱麻

製造は簡単も生き残り難しく…果たしてEVは世界を席巻するか (1/3ページ)

 地球温暖化対策上、重要なエネルギー消費部門の一つは、世界の二酸化炭素(CO2)排出量の2割近くを占める自動車輸送部門だろう。国際エネルギー機関(IEA)によると、2018年のエネルギー起源CO2排出量の24%を運輸部門が占め、そのうち4分の3は自動車からの排出だ。(常葉大学経営学部教授・山本隆三)

 新興国、途上国の経済発展に伴って自動車輸送量は大きな増加が見込まれており、この部門のCO2排出削減は大きな課題となっている。対策の一つは、CO2を直接排出しない電気自動車(EV)の導入だ。

 中国は、販売台数の一定割合をEVなどの新エネルギー車(NEV)にする規制を導入。欧米では排ガス規制の導入が進んでいる。18年のプラグイン・ハイブリット車(PHEV)を含むEVの導入台数は、中国市場で100万台を超え、世界では200万台に近づいた。しかし、EV市場の先行きは不透明だ。中国では今年からNEV規制が本格導入され、補助金制度と相まってEVメーカーが乱立することになり、現在500社近くもある。一方で、米中貿易摩擦の影響による中国自動車市場の縮小と、EV購入に対する政府補助金の減額の影響で、中国のEV市場には不透明感が漂ってきた。生き残れるメーカー数は現在の10%以下との見方も出ている。

 米国のEVメーカー、テスラの量産車「モデル3」の生産は順調になってきたが、同社は相変わらず赤字が続いている。米国のEV市場はテスラの増産分だけ伸びているが、それほど大きな広がりは見せていない。オバマ前米大統領時代に導入された、連邦政府の排ガス規制についてはトランプ政権が緩和の姿勢を見せており、連邦政府の政策がEV導入を後押しすることは期待薄になってきた。

 欧州連合(EU)では、排ガス規制値を厳しくすることによってEV導入を促す政策がとられているが、現状では市場の伸びは大きくない。その理由の一つとして、所得との関係が指摘されている。1人当たりの国内生産額(GDP)とEV導入率との間には、明確な相関関係があるとされる。1人当たりのGDPが大きくない国は、EV購入に対する補助金などの支援策を用意することは困難だ。

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