フェニクシー(京都市左京区)は今年に入り、京都大(同区)近くに住居付きの創業支援施設「toberu(トベル)」を開設した。インターネット検索サイトのグーグルなどが誕生した米西海岸のシリコンバレーでの取り組みをヒントに、新事業や創業を目指す人たちが短期間住み込む形で事業計画を練るベンチャーの孵化装置の役割を果たすことが狙いだ。
製薬業界などから転身し、フェニクシーを創業した橋寺由紀子社長は「日本で優秀な人材が集まるのは大企業」という点に着目。日本でベンチャー企業が育ちにくいとの指摘もある中で「日本にいい人材がいないといわれるのはショック。大企業に勤める優秀な人材がリスクなく、創業できる仕組みを考えた」と明かす。
6月から約4カ月間、創業や新事業の実現を目指す第1陣のメンバーとして、地元・京都のオムロンやNISSHAだけでなく、富士フイルムやダイキン工業など日本の大企業に在籍する若手社員ら9人が施設に住み込み、メンバー同士で議論、交流も重ねながら、新事業の計画を立案した。10月4日に9人がそれぞれ考えた新事業の計画を発表するプレゼンテーションの場が公開され、計画実現に向け本格始動した。
人材を送り込んだNISSHAの鈴木順也社長は「社内検討で未成熟な新事業のテーマについて、いろんな支援を得ながら実現につながれば」と期待する。
フェニクシーはこうした施設を京都市内に複数構える計画を掲げており、ベンチャー企業を応援する資本家(出資者)らを紹介しながら、京都発のベンチャー企業を次々と生みだし、育成する成果を出す考えだ。
10月1日付で同社と連携協定を結んだ京都市も「地域企業」の支援に力を入れており、同市の門川大作市長は「世界に向け、京都から企業のネットワーク、連携が広がれば」と語る。