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かつてゲテモノ扱いされた「名古屋めし」 逆境を乗り越えた“強さ”とは (2/2ページ)

 世界の山ちゃんでも「飲食後に“味が濃い”といわれることはよくあるが、“名古屋でははっきりした味が好まれるのです”と説明すると納得してくれ、名古屋ならではの濃い味を楽しんでくれている」という。

 内・外の障壁の克服が名古屋めしビジネスを強くした

 名古屋めしビジネスの強さの背景には、名古屋人のシビアな金銭感覚に鍛えられてきたこともあると考えられる。「財布のひもが固いといわれる名古屋で、いかにお客さまの満足度を高めてリピートしてもらうかを重視して、商品やサービスの充実を図ってきた。そこで培われてきた『くつろぐ、いちばんいいところ』というコメダスタイルは全国に通じる普遍的な価値があったのだと考えています」と、コメダ珈琲店・広報。セルフサービスでなければ成立しないと思われていた喫茶店業界にあって、フルサービスでファンをつかんできたのは、同社の顧客第一主義を象徴している。

 「名古屋の消費者を満足させられれば全国どこでも成功する」。これは他県での出店を果たした名古屋の飲食企業からしばしば聞かされる言葉。名古屋人は倹約志向が強いため、飲食店は高いコストパフォーマンスが求められる。加えて人口流動が少ない土地柄もあって、新規客の獲得以上に常連の来店頻度を高めることが重視される。常に顧客の満足度向上に努めてきたことが、名古屋めし企業の競争力を高めてきたといえるだろう。

 もう一つ、逆境をバネにしてきたといえば、名古屋の食文化に対するかつてのネガティブなイメージの克服も挙げられる。1990年代までは名古屋は東京のメディアから揶揄(やゆ)されることが多く、独特の食文化はその象徴でもあった。「何でトンカツにみそをかけるの?」「うなぎの蒲焼をお茶づけにするなんて!」とゲテモノ扱いされることが少なくなかったのだ。

 こうした雌伏の時代を経験しているがゆえ、名古屋めし企業は決しておごることなく、リサーチや食材、人材の確保などしっかり足場固めをした上で他県での出店を進めていると考えられる。

 オール名古屋でスクラムを組んでいく

 このような内外の障壁を乗り越えてきたことこそが、名古屋めし企業の強みといえる。また、名古屋の外食企業は横のつながりが強いといわれ、今後それを他地方でも発揮できるとさらにビジネスチャンスが広がっていく可能性もある。

 「いろいろなジャンルの名古屋めしのブランドが一堂に会した『リトル・ナゴヤ』のような形で進出した方が、名古屋めしの多彩さをアピールできるし、お客さんにとっては選ぶ楽しみがある。オペレーションの面で各社の負担が軽減されるメリットもある。名古屋めしの企業は外食産業の中では中小クラスなので、大手に対抗するには手を取り合うべき」と矢場とん・鈴木社長。

 地元ではこのような取り組みは既に事例があり、名古屋城近くの観光スポット「金シャチ横丁」、人気店を集めた「名古屋丸八食堂」(愛知県豊田市など)がそれにあたる。他県でもこうした出店が実現すれば、名古屋めしのブランド力がいっそう高まることが期待される。

 単体でも個性と強さを発揮している名古屋めしビジネス。オール名古屋でスクラムを組んでいけば、今後いっそう他エリアでの勝機は広がりそうだ。(ITmedia)

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