入場者数の偏重
もう一つの気付き事項は、展示のあり方についてである。今回は海外メーカーからの出展も激減し、日系自動車メーカーもブース・展示車両とも予算を絞りぎみであることから入場者数が減少することが予想された。そのためか事務局では反転すべく、100万人の入場者を目指したようである。しかし、筆者からすれば人を呼ぶためならば、なりふり構わぬ点があるように見受けた。
例えば、e-Sportsや、通常は別の時期に開催している「Tokyo Auto Salon」とのコラボである。アミューズメントや、これまでとは別の観点から開催してきたことを混ぜてしまうと、このモーターショーで何を主張したかったのか分からなくなってしまうのではないだろうか。
今回の展示を例えると、おもちゃ箱をひっくり返したような展示のように思われ、何のショーだったのか焦点がぼやけたように見受けた。
筆者が考えるに、今後、東京モーターショーに求められているのは、日本の基幹産業である自動車および周辺が今後どのような方向に進もうとしているのか、また未来はどのように変わり、ユーザーの意識としてもどう変わらなければならないのかを、きちんと論理立ててアピールすることではないかと考える。
その意味からCASEのみならず、MaaS分野や、MaaSを基盤とするインフラ分野、電気・電子・通信業界が一緒になって、将来のあり方を考え提示していくことが大切に思える。結果的に自動車メーカーの比重は下がるかもしれないが、新しいモビリティーやサービスのあり方、インフラの将来像を見せるよう企画することで、参加企業や参加入場者も盛り返すように思われる。
【プロフィル】和田憲一郎
わだ・けんいちろう 新潟大工卒。1989年三菱自動車入社。主に内装設計を担当し、2005年に新世代電気自動車「i-MiEV(アイ・ミーブ)」プロジェクトマネージャーなどを歴任。13年3月退社。その後、15年6月に日本電動化研究所を設立し、現職。著書に『成功する新商品開発プロジェクトのすすめ方』(同文舘出版)がある。62歳。福井県出身。