これまでもスポーツによる観光誘致には取り組んできた。対馬の観光パンフレットは、表紙や冒頭の特集にシーカヤック、トレッキングなどを掲載し、アウトドアスポーツの好適地であることをアピール。また「国境サイクリング」と重なる10月19~20日には、市内で「九州還暦軟式野球選手権大会」が開かれ、各県から16チームが参集した。「国境マラソンin対馬」も毎年夏に開催し、23回を数えている。
交通、宿泊…課題山積
ただ、スポーツによる観光誘致には課題も山積している。「国境サイクリング」は、過去2回の参加者が各50人前後。今年も当日の出走者は95人にとどまった。市は今大会に400万円を支出し、スタッフ250人を投入したが、プロモーション不足などから効果的な集客に至っていない。
本土から対馬への交通アクセスは、福岡と長崎からの航空便と、福岡からの高速船・フェリーに限られる。関東・関西などから訪れる場合、時間も手間も費用もかかるのが実情だ。
島内の宿泊施設は民宿やペンションが中心で、大人数を収容できるホテルは少ない。今年の「国境マラソン」には日韓から約1200人がエントリーしたが、数千人規模の誘客イベントは、宿泊や交通の許容力から難しい状況だ。
市はサイクリング大会などを国内誘客の柱にするため「10年、20年越しで集客し、定着させていきたい」との考えだが、同時に交通アクセスや宿泊事情の改善・充実も欠かせない。
観光再生ビジョン策定へ
一方、対馬市役所では10月18日、観光振興に向けた重要な会議「対馬観光のあり方検討会」が開かれた。今夏以降の韓国人客激減を受け、対馬の観光をイチから見直して再構築しようとする取り組みだ。
市によると、この日の初会合では、観光関係者や有識者が「国内向けの交流イベントを増やし、観光誘致をどんどんやっていこう」などと意見を述べ、比田勝尚喜市長らが聞き入った。
市文化交流・自然共生課の平間博文課長は、「検討会の議論をもとに『観光再生ビジョン』を取りまとめ、令和2年度以降の市観光振興推進計画に反映させたい」と意気込む。
韓国で今年7月以降、日本製品不買や日本旅行自粛を呼びかける「No Japan」運動が展開された結果、対馬では9月の韓国人客が3080人にとどまり、前年同月の3万1152人から90%超も減った。
ただ対馬市側には、これまで韓国人客が急増したことにも、今回激減したことにも、複雑な思いがある。
「パンク状態」解消
対馬の韓国人客数は平成23年に約4万8000人だったが、昨年までの7年間で約8.5倍に急伸した。きっかけは、釜山と対馬を結ぶ船が相次いで就航し、競争が進んだことだ。韓国の旅行会社が対馬ツアーを組み、団体客が押し寄せた。「特にPRを強化していないのに、どんどん増えた」(市幹部)という。