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スタバが貫く「ロマンス予算」 店舗数最多でもダサくならないチェーン経営 (1/2ページ)

 日本のコーヒーチェーンで店舗数が最も多いのはスターバックスだ。今やどこでも見かけるが、「スタバはかっこ悪い」とはなっていない。経営コンサルタントの鈴木貴博氏は「どこにでもあるが、どこも居心地がいい。自宅のようにくつろげる場所であることが最大の強みだ」という。

 「スタバにいることがかっこ悪い」とはならない

 スターバックスには「そこらじゅうにあるなぁ」という印象を持っていました。直近の数字を調べてみると、日本全国で1497店舗になったとあります。これはコーヒーチェーンでは日本一。スタバは1996年の日本上陸から、いつのまにか「どこにでもあるお店」になったのです。

 しかし、飲食業界では「店舗数が必要以上に増えた企業はろくなことにならない」という、ジンクスというか経験則があります。「量質転化」といって、数が増えることで質が変わってしまう現象です。

 これは飲食店が提供するメニューの原材料や品質、製法が同じであっても、消費者がそれに飽きたり、新しい消費者層が増えることで客層が変わったり、ブランドイメージが大衆化したりということは必然的に起こるというメカニズムです。

 たとえばマクドナルドは日本に上陸した1972年当初は、最先端のファッションリーダー的な存在でしたが、店舗数が増えるにしたがって大衆向けのイメージに変わっていきました。行列が話題だったクリスピークリームドーナツにしても、行列がなくなったとたんに高級品のイメージが薄れました。

 一方で、スタバのイメージは、これだけ店舗数と顧客が増えてもなかなか劣化しません。「スタバにいる自分はかっこいい」と感じていた初期の顧客が、スタバの大衆化にともない「スタバにいることがかっこ悪い」といい出すような量質転換が、なぜか起きていない。これは不思議な現象です。

 安くておいしいセブンのコーヒーもあるのになぜ?

 もちろん「スタバが負けた」という話はそこら中で耳にします。ある有力な消費者調査において、顧客満足の項目でスタバがドトールに負けたとか、専門家の味覚調査でセブンに負けたとか、「スタバが負けた」話には一定の需要もあります。

 ただ、そういったニュースを耳にはしても、相変わらずスタバのお店は繁盛しています。ではそのニュースが嘘なのかというとそうではなく、確かにドトールでは注文してから商品が出てくるまでの時間がスタバより短いですし、セブンのコーヒーがスタバよりもずっと安いのにもかかわらずおいしいのは事実です。

 それでもなぜ、時間帯によっては行列に並ばなければならず、注文にもひと手間かかるスタバが、開業から何年たってもにぎわっているのか。数年前には「本国ではスタバよりも人気」だというサードウェーブコーヒーがいくつも上陸し、話題になりましたが、実際にはスタバに勝てない雰囲気が生まれています。

 スタバが日本に上陸する前の1990年代前半、私は当時在籍していたグローバルコンサルティングファームの研修で、こうしたスタバの強さの秘密について、長い時間をかけてレクチャーとディスカッションを行ったことがありました。コンサルファームには業界別の専門部会というものがあって、このとき私はチェーンビジネスのコンサルを手がける人々と一緒に、アメリカの西海岸で会議に参加したのです。

 「長居をすること」に価値がある

 当時は「アメリカの西海岸で面白いベンチャーが成功を収めているから、それについて議論しよう」という流れでした。スタバの資料を事前に見て「日本のドトールと同じ成功例なのかな?」という第一印象を持ったことを覚えています。

 この研修に参加する人には、1つだけ条件が課されていました。それはアメリカに到着してから会議がはじまるまでに、必ずスタバを実際に訪問することです。初めて店舗を訪れてみると、その場で私の第一印象は覆されました。

 お店とそこで提供されるカフェラテを体験してみると、そこがドトールとはちがうことが即座に理解できます。でも、なぜスタバが成功しているのかはまだわかりません。その後に参加した研修で主催者側は、「商品ではなく体験を売る成功ビジネス」とスタバを分析していました。

 今でも印象深いのが、スタバの価値は「長居をすることにある」という議論でした。従来のチェーンビジネスの経営戦略はこの逆で、生産性に重きを置くのが主流でした。ウォルマートに買い物に来た人は、本来なら長居はしたくありません。

 だから早く目当ての商品にたどり着けるよう、棚はわかりやすくレイアウトすべきだし、品物を切らして顧客をイライラさせないことも大切です。顧客が極力早く目的を達成でき、店舗での滞在時間が短いほうが、サービス価値は高いのです。

 ところが、スタバについては「その逆の現象が起きているのではないか?」というのが、議論のポイントでした。

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