【巨大組織の闇(下)】大炎上、実態解明ほど遠く
日本郵政グループが18日に公表したかんぽ生命保険の不適切販売問題をめぐる調査報告は実態解明にはほど遠い内容となった。調査自体が終わっていない上、焦点だった経営トップの進退など経営責任について、弁護士らで構成する特別調査委員会、会社側とも明言しなかった。問題は収束に向かうどころか、さらに炎上した。
会見に納得できぬ
「調査件数は積み上がってきた。顧客対応もそれなりに示せる」。1週間ほど前、かんぽ生命の幹部は調査の進捗(しんちょく)に手応えを語った。9日に閉会した臨時国会も当初はNHKのかんぽ報道問題が大きな論戦になったが、終盤にかけて落ち着いた。年末の調査報告と金融庁の処分を踏まえ、幕引きの仕方に腐心する関係者の姿が散見された。
だが、会見では顧客や社員の不安を払拭することはできなかった。
都内在住の60代男性の契約者は、会見の内容を報道で知り、「とても納得できない」と憤慨する。50代の愛媛県の郵便局員は郵政グループ社員は「会社がこの先、どうなるのかが見えない」と不安げに語った。
顧客、社員とも会見に納得できないのは、調査が道半ばだからにほかならない。調査では顧客に不利益を被らせた疑いのある約18万3000件のうち顧客の意向を確認し、法令や社内規定に違反したと疑われる契約は1万2836件と9月末時点から倍増。だが、販売員の聞き取りなどを経て違反と判定できたのは2487件と、疑いがある件数の2割にとどまる。
違反と判定した社員は社内で処分するが、確認作業に時間がかかり、「不正を働いた社員がまだ処分されないのはおかしい」と郵便局員の不信感もくすぶる。並行して進める全件調査の結果、不適切販売の件数がさらに増える可能性もある。
そして、最大の問題点は郵政グループ3社のトップが自らの進退を明確にしなかったことだ。日本郵政の長門正貢社長は経営責任について「しかるべきタイミングで改めて発表する」と明言を避けた。「経営責任にはいろいろある。辞任だけではない」とも発言した。