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「秘密のケンミンSHOW」で大反響 「ケンミン食品」が狙う空白のビーフン市場 (3/3ページ)

 近年の宣伝手法はどうなっているのか。スーパーなどの弁当・惣菜コーナーで、「ケンミンのビーフン使用」というシールが貼られた調理済みビーフンをよく見かけるようになった。これは元々、中国などから輸入された、米の比率の低い安価なビーフンとは品質が違うとアピールするためのものだ。安全・安心を訴えるために、ローソンの店舗で始めた。

 現在は、「ケンミンのビーフン使用」をうたうことで、売り上げがアップするので、さまざまなチェーンが採用している。

 消費増税以降の売り上げ不振もあって、近隣のスーパーの弁当・惣菜コーナーを覗くと、「オタフクソース特製ソース使用」のロースカツサンド、「たいめいけん茂出木浩司シェフ監修」の海老グラタン、「第8回からあげグランプリ最高金賞 からあげの鳥しん監修」の骨なしもも唐揚げなど、有名メーカーの商品を使っていたり、有名店の監修を受けたりしていることをうたう商品が増えている。

 「こういう素材を使っている」「こういうこだわりがある」などと百の言葉を連ねるより、ブランドを打ち出したほうが消費者には効くのだろう。ケンミン食品のビーフンも、こういったトレンドに乗っている。

 また、19年からJ1リーグ「ヴィッセル神戸」のスポンサーの1社になっており、イベントで選手の写真を袋に印刷したビーフンを無償でファンに提供して喜ばれている。継続すればサッカーファンに浸透し、大きな力となるだろう。

 外食への普及が課題

 外食への普及が進んでいないのも、ケンミン食品の大きな課題だ。価格的に優位にある中国製品などに、どうしても押されてしまうのだという。そこで、同社では自ら外食に進出し、ビーフンやビーフンに合う中華料理、台湾料理の発信に努めている。

 1985年に日本三大中華街の1つ、神戸・南京町にビーフンと点心の専門店「YUNYUN」をオープン。月間10万個を販売する、焼小籠包の人気店となっている。

 19年9月には、大阪の大丸心斎橋店本館地下2階のフードホールに、2号店を出店した。

 また、神戸・元町の本社1階には中国の上級認定資格「特級厨師」の資格を持つ料理長が指揮する「健民ダイニング」がオープンしており、本格的な中華が良好なコストパフォーマンスで楽しめると、人気店になっている。16年には、東京・六本木に姉妹店「健民ダイニング六本木店」がオープンし、四川料理を専門とするシェフを擁して本店に負けないクオリティだと評価が高い。

 ケンミン食品の飲食店ではお湯で戻す「ケンミンビーフン」を使用しているが、実際に食べた顧客からは「家でつくるビーフンと全然違う。どうすればお店の味に近づけられるのか」と多くの質問が寄せられた。主たる原因に火力の違いが挙げられるが、同社の社員が数年間悪戦苦闘した結果、家庭でもほぼお店に近い味が出せるレシピが完成した。

 ケンミンビーフンは炭水化物だが、食後の血糖値の上昇が緩やかな低GI(グライセミック・インデックス)食品であり、肥満になりにくい性質を持っている。また「ケンミン焼ビーフン」シリーズのほかに、同社製品の多くが低GIの傾向を持っており、麺を二度蒸しする製法によりその性質を獲得するのではないかといわれている。

 同社では、低GI食品ということをアピールできて、プロテニスのデニス・ジョコビッチ選手が提唱したグルテンフリー健康法が浸透していることを背景に、19年から米国への輸出を開始した。ニューヨークなどでは、フォーなど米の麺の店が流行してきているので、チャンスがあるのではないだろうか。

 えんどうタンパクを配合した高タンパク麺も、16年から発売しており、健康志向の高まりに対応した商品ラインアップを充実させてきている。

 「ビーフンは年間1億食の市場といわれますが、日本国民が1年に1食のビーフンを食べているに過ぎません。それも何食も食べている人がいる一方、まだビーフンを知らない人も多いのです。これを1年に2食にするだけで、売り上げは倍増します」(堂本輝明東京支店長)。

 確かに健康志向の高まりは、ケンミン食品にとって追い風で、売り上げを2倍にするのは十分に可能と見受けられた。(ITmedia)

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