一方、関西国際空港と大阪(伊丹)空港に水素ステーションを設置している関西エアポートは、7年に開催される大阪・関西万博までに両空港を結ぶリムジンバスに燃料電池車(FCV)の導入を目指す方針で、今後は実現に向けてバス会社などに導入を働きかけていくという。
コスト削減課題
政府は一昨年改定したエネルギー基本計画で、水素を再生可能エネルギーと並ぶ選択肢と明記し、普及に向けてさまざまな施策を打ち出している。だが、本格利用には依然、高い壁が立ちはだかっている。
水素の製造は化石燃料から取り出したり、水を電気分解したりする工程が必要になるためコストが高い。その上、水素を動力源とする機器もまだ十分にそろっていない。
FCVの国内の普及台数は平成30年度末で約3千台。26年にトヨタ自動車が世界で初めて一般向けのモデルを発売したが、業界全体で販売が伸び悩んでいる。車両価格が高額なほか、燃料を供給する水素ステーションも約110カ所(11月時点)しか整備されておらず、不便さがネックになっているとみられる。
政府は去年3月、水素と燃料電池の普及に向けた行程表を公表し、令和7年をめどにFCVを20万台、水素ステーションを320カ所まで増やす目標を掲げた。FCVの価格や水素ステーションの整備・運営コストを下げる計画だが、「サプライチェーン全体でコストを削減できないと達成は難しい」(エネルギー業界関係者)との見方がある。
日本でLNGが導入されてから2018年で50年。今や石油からの燃料転換が進むLNGと同様に、水素が社会全体で広く活用される時代がやってくるのか。そのカギは企業が握っている。