高論卓説

福島の若手農家、「消防団」を変える ベンチャー魂で火事情報共有アプリ (1/2ページ)

 「地震、雷、火事、オヤジ」

 昔の人は手に負えない制御不能なものをこう呼んだ。特に火事、日本の家屋は木造だから火の回りも早い。大火も何度も起きた。火事を防ぐために日本人は昔から周到な準備をした。それが火の用心の巡回であり、組織化された。「武士火消」や「町火消」だ。(平松庚三)

 やがて、火消し組織は消防署と消防団へと姿を変えていく。消防署員とは地方公務員でフルタイムの消防署職員。一方、消防団員は特別地方公務員で普段は別の仕事に従事しており、有事の際にのみ現場に駆けつけるボランティアで構成されている。現在国内の消防署員は17万人、消防団員は85万人だから日本の消防体制は消防団に頼るところが大きい。

 だが、消防団員は普段それぞれの場所で仕事をしているから、火災発生から出動までに少々時間がかかる。火災発生の第一報は消防署から各行政へ知らされ、その後消防団の各層へと順番に伝わり、そして団員が詰め所に駆けつけるという段取りだ。詰め所から消防車を出動させるには最低3人の団員が必要だが、いつ3人がそろうか、誰が駆けつけてくるか、来られないかを互いに電話連絡しあう。出動前に時間がかかるのはここだ。

 この問題に前々から着目していたのが福島県須賀川市の消防団員で米農家の和田晃司さんだ。火事の一報は田んぼで作業中の和田さんに入ることもあるから、有事には田んぼからそのまま詰め所に駆けつける。和田さんは軽トラの中で他の団員と連絡を取り合い、出動可能団員の確保と消防車出動チームの編成、現場への到着時間、近くの水利(消火栓、防火水槽、ため池など)の確認などの段取りを決める。

 工学部出身の和田さんはこの問題をICT(情報通信技術)を使ってなんとか解決できないかと考え続けていたが、スマートフォンで専用アプリを開発することを思いつき、同じ須賀川市消防団員でシステムエンジニアの斎藤浩平さんに簡単な設計図と要件定義を渡したことがこの防災アシストアプリ開発の始まりだった。

 このアプリを使えば、火災発生を同時に全団員に火事現場の地図と近くの水利地図をセットにして知らせることができる。さらに消防車の出動状況とその位置、出動中の団員とこれから出動できる団員名も表示されるから現場到着から消火開始に至るまでの時間は大幅に短縮される。

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