それだけではない。グーグルのラリー・ペイジやサーゲイ・ブリンが研究を進めた検索エンジンはスタンフォード大の技術ライセンス事務所が特許申請を行い、大学教授数人やサン・マイクロシステムズが支援。同大大学院生だったジョン・チャウニングが開発した初期の電子音楽を事業化するために米国内のみならず、日本のヤマハにまで声をかけたのも技術ライセンス事務所だった。
「米国のオルガンメーカーに声をかけたのですが、どこも関心を示さない。そこでスタンフォード大の技術ライセンス事務所はMBA関係者に意見を求め、世界最大の音楽メーカー、ヤマハに声をかけて事業化を実現した」(コンピュータ歴史博物館のギャラリーインタプラターの山崎敦史氏)
これがヤマハの大ヒット、シンセサイザー、DX7の開発につながり、河合楽器製作所、ローランドなどに広がっていった。大学がどこまで研究開発を事業化にまで導けるかが日本でも今後大きな課題になるのではないだろうか。
【プロフィル】松崎隆司
まつざき・たかし 経済ジャーナリスト。中大法卒。経済専門誌の記者、編集長などを経てフリーに。日本ペンクラブ会員。著書は『東芝崩壊19万人の巨艦企業を沈めた真犯人』など多数。埼玉県出身。