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東日本大震災の被災地・岩手から「影裏」が挑む 地方発の映画製作は根付くか (1/3ページ)

波溝康三

 岩手県初の芥川賞作家、沼田真佑の同賞受賞作「影裏」を、映画「るろうに剣心」シリーズなどで知られる同県出身のヒットメーカー、大友啓史監督が映画化した異色のプロジェクトが話題を集めている。「東日本大震災の被災地・岩手から、映画、文化の力で復興支援ができれば」という大友監督の呼びかけに地元企業が全面支援。石川啄木や宮沢賢治を輩出した土地柄を象徴するように、県内約40書店で組織する県書店商業組合も“文化県・岩手”を前面に打ち出したプロモーションを展開している。「東京ではなく地方都市から映画発信はできるのか?」という試みに大手映画会社も強い関心を示す。新たな映画製作のビジネスモデルは根付くのか、その秘策はあるのか、大友監督に聞いた。

 「この小説を映画化したい…」

 2017年、自身の故郷である盛岡を舞台にした小説「影裏」を読んだ瞬間、大友監督はこう熱望したが、同時に「純文学の地味な小説。映画化は難しいかな…」とあきらめかけていたという。だが、しばらくして同年、「影裏」が芥川賞を受賞。盛岡在住の沼田による岩手県初の芥川賞受賞に地元は沸いた。大友監督は、このチャンスを逃さなかった。同時期、地元のテレビ岩手から開局50周年事業のための映像製作の依頼を受けており、この企画で「影裏」を映画化することが決まったのだ。

 盛岡で生まれ育った大友監督にとって、故郷での映画製作は長年の悲願だったという。

 11年3月11日、東日本大震災が発生したとき、大友監督は名古屋駅にいた。「新幹線で東京へ戻る途中、地震が起こり、足止めされたんです。電話をかけてもなかなか家族とつながりませんでした…」と振り返る。

 地震発生時に地元へ帰ることができなかったことを、ずっと後ろめたく感じ、以来、「いつか故郷・岩手で映画を撮りたい」と考えてきた。  

 NHKの演出家時代、経済小説「ハゲタカ」をドラマ化。映画版も手掛けた後、11年4月、NHK退職後はフリー監督となり、洋画大手のワーナーブラザースと日本人監督として初めて契約を結び、「るろうに剣心」シリーズなど次々と大作のヒット作を繰り出してきた。だが、頭の中では常に、地元・岩手県での映画化の構想が離れなかったという。

 そして3年前の17年8月、大作などの製作を続ける一方で、「自分の企画した映画を自由に撮るために…」と新たに立ち上げたのが、企画・製作会社「OFFICE Oplus」だ。

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