高論卓説

失われる睡眠時間や対話能力 外出自粛中のスマホ依存に注意

 失われる睡眠時間、脳機能、対話能力

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、集会の中止や休校、外出自粛が続いている。東京都でも小池百合子知事が25日に緊急会見し、週末の不要不急の外出を自粛するよう要請した。平日の仕事はできるだけ自宅で行い、夜間の外出は控えてほしいという。若年層などが感染の自覚がないままあちこちで活動することについても、改めて見直してほしいと訴えた。

 全国の学校では新学期が予定通り始まるようだが、それまでは子供たちも引き続き自宅で過ごすことになる。そこで、あえて注意を促したいのが、「メディア漬け」だ。

 ここでいう「メディア」とは、テレビ、DVD、電子ゲーム、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末などの電子映像メディア機器を指す。

 日本小児科医会は近年、小児と電子映像メディアとの接触時間を制限するよう訴えて、「見直しましょうメディア漬け」「スマホに子守りをさせないで!」といった啓発冊子を配るなどの活動をしている。

 具体的には、(1)2歳まではテレビ、DVDの視聴を控える(2)授乳中、食事中のテレビ、DVDの視聴はやめる(3)全てのメディアに接触する総時間を制限することが重要。1日2時間までを目安と考える(4)子供部屋にはテレビ、DVDプレーヤー、パーソナルコンピューターを置かないようにする(5)保護者と子供とでメディアを上手に利用するルールをつくる-という「5つの提言」をまとめている。

 日本医師会と日本小児科医会が2017年に公表した「スマホ依存に対する啓発ポスター」でも、スマホの使い過ぎによって失われるものとして、睡眠時間、学力、体力、視力、脳機能、コミュニケーション能力を挙げ、節度ある利用を促した。

 一方で、パソコンやタブレットを使った授業が導入され始めたので、電子映像メディアとの総接触時間を制限するのは難しい面もある。とはいえ、野放図な利用は子供に悪影響を与えると知っておくだけでも、行動変容につながるのではないだろうか。

 例えば、乳幼児期は視力が発達する重要な時期とされる。テレビやDVD、特にスマホ、タブレットなどの小さな平面画面を見る時間が長いと、視力の発達を妨げることが分かってきた。実際、日本の子供の視力は、テレビやゲーム機の普及後、急速に悪化している。

 むずかる赤ちゃんを子育てアプリの画面でなだめることも、成長をゆがめる可能性があるという指摘がある。なぜ泣いているのかわからないときには、「どうしたの」などの声掛けや抱っこを繰り返すことで親子の絆が育つという。

 また、子供の体力、運動能力や社会性は、体を使った自由な遊びによって育つとされている。現代日本の子供たちには体を使った遊びが激減しており、その結果、肥満などの生活習慣病やロコモティブシンドローム(運動器障害)が問題になってきている。

 感染対策で行動が制限されるなか、「スマホで子守り」は仕方ない、とあきらめがちだが、こんな時こそ、絵本の読み聞かせや散歩、外遊びなどを通じて、親子の体験を共有する貴重な機会にしてみてはいかがだろうか。

【プロフィル】東嶋和子

 とうじま・わこ 科学ジャーナリスト。筑波大・青山学院大非常勤講師。筑波大卒。米国カンザス大留学。読売新聞記者を経て独立。著書に『人体再生に挑む』(講談社)、『水も過ぎれば毒になる 新・養生訓』(文芸春秋)など。

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