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新型コロナで小売りの構造変化 ネット通販急増で揺らぐ実店舗の優位性 (1/2ページ)

 学校の臨時休校措置やテレワークの推進など、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛で「巣ごもり消費」を迫られる中、インターネット通信販売の需要が急増している。小売り店舗が充実する日本国内は、海外に比べてネット通販の利用率が伸び悩んでいたが、新型コロナ対策を機に実店舗優位の構図が変化。消費の主戦場としてネットの存在感が高まり、業界内の主導権争いも激しさを増しそうだ。

 靴試着、ITで解決

 「ネットで靴を買うハードルを下げる」

 アパレル通販サイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を運営するZOZOの伊藤正裕最高執行責任者(COO)は3月4日の会見で、同日にサービス開始の靴専用モール「ZOZOSHOES(ゾゾシューズ)」の展開に自信をみせた。会見は、新型コロナの感染拡大に伴いネット配信で実施。自粛ムードが漂う中での“船出”だったが、伊藤氏の声に悲壮感はない。靴のネット通販は、実店舗よりも試着が難しいなどの理由から販売が伸び悩んでいたが、ITで風穴を開けられるとの強い期待があるためだ。

 ゾゾシューズでは、足のサイズを立体計測できるマット「ZOZOMAT(ゾゾマット)」を活用。マットに乗せた足を7方向からスマホのカメラで撮影すれば、選んだ靴の最適サイズが表示される。試着が難しいというネット通販の“アキレス腱(けん)”をカバーする。

 同社の調査では、ネットでの靴購入は「サイズが不安」との回答が8割を占める。ゾゾタウンの靴売上高は年間400億円だが、矢野経済研究所によると、国内の履物市場は年間1.4兆円。伊藤氏は「1000億円を目指す」と未開地への攻勢を宣言した。

 経済産業省の調査によると、国内のネット通販の市場規模は右肩上がりで拡大し、2018年は18兆円に迫った。特に大部分を占める物販のネット通販は前年より1兆円以上も上積みされ、9兆円を超えた。ただ、近年は拡大の勢いに陰りがみられる。物販系の市場規模は経産省の調査開始以降、10%以上の高い伸び率が続いたが17、18年の伸びはそれぞれ7.45%、8.12%と2年連続で10%を割り込んだ。要因の一つは競合する実店舗の存在だ。

 総務省によると、16年時点で食料品の店舗は国民400人に1カ所、衣料品や身の回り品の店舗は900人に1カ所の割合で事業所がある。大和総研の本谷知彦チーフコンサルタントは「駅前や自宅近くなどの生活動線上に店舗がある。消費者にとって利便性があり、買い物の楽しさも味わえる」と分析する。

 このためか、日本では実店舗よりネットの方が安いと感じる消費者の割合が諸外国より高い半面、ネット通販の利用率は低水準。米調査会社のイーマーケターによると、日本のEC利用率は7.3%で20%超の中国や欧米各国と比べて見劣りする。

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