消費の主戦場移る
だが、直近のネット通販の好調ぶりは、新型コロナの感染拡大で実店舗の優位性が揺らいだことの裏返しだ。
「楽天西友ネットスーパー」を展開する西友は、コロナの影響が拡大した1月後半から、「徐々に注文が増えた」(広報担当者)。アスクルが運営するロハコは、東京都知事の自粛要請のあった3月25日以降、新規の利用者数が急増。「新型コロナの影響で、リアル店舗では商品が手に入らないという状況に直面し、初めてネット通販との“出合い”を経験した消費者も多いのではないか」と担当者は振り返る。
消費の主戦場が移り始めたことで、外食も出前や宅配へのシフトを進めている。エヌピーディー・ジャパンによると、外食での出前市場規模は今年1月までの1年間で前年同期比1.7%増だが、1月に限れば11%増、2月の伸び率は20%を超えた。外食の宅配を手掛ける出前館は2月の注文数が18%増、2月下旬から3月上旬には新規加盟の問い合わせ件数が3~4倍となった。
競合同士のつばぜり合いも本格化。ヤフーの親会社Zホールディングスは3月24日、通販サイト「ペイペイモール」と「ヤフーショッピング」で、ヤマトホールディングスと提携。ヤマトの物流拠点で出店者の在庫を預かり、個別店舗からよりも迅速な配送を可能にし、物流網の充実で先行するアマゾンジャパン(東京)や楽天を追う。
出前館も同月26日に通信アプリ大手LINE(ライン)などを引き受け手とする第三者割当増資を実施すると発表。実質的にライン傘下に入る。
もっとも、本谷氏は「ネット通販はまだ、実店舗での買い物の代替という位置づけ」とした上で、さらなる市場拡大には「消費者側もサービスレベルを求めすぎないなど、柔軟な意識改革が必要かもしれない」と課題を指摘している。(佐久間修志)