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新型コロナ禍がスポーツ界の未来を担うグラスルーツにも 現場存続の危機 (1/2ページ)

 新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言の対象地域が全都道府県に拡大され、各地の繁華街から人影が消えた。街のサッカー場や野球グラウンドで体を動かす子供の姿もない。いつもは予約が取れないほどにぎわう西日本最大級のサッカートレーニング施設「J-GREEN堺」(堺市)は8日から臨時休館中。コロナ禍は「グラスルーツ」と呼ばれるスポーツ界の裾野にも深刻な影を落としている。子供たちに野球やサッカーを教える「地域チーム」や「街クラブ」の一部は、活動休止で経営が悪化。コーチや指導者の解雇も始まっている。スポーツ界の未来を担う選手を育む現場が、危機に瀕(ひん)している。

 みんな途方に

 関西2府4県の中学年代と高校年代をあわせて約240チームが加盟する関西クラブユースサッカー連盟。宮川淑人会長は「今は死んでいるような状況。いつ活動が再開し、大会が行えるようになるのかも分からない」と苦境を訴える。

 政府が小中高校などの3月2日からの臨時休校を要請した当初は、クラブの形態によって対応にばらつきがあった。学校のグラウンドを借りて活動していたクラブは休止を余儀なくされたが、その他の多くのクラブは通常のチーム練習ではなく、会員の子供たちが個別にトレーニングする自由練習の形を取るなどして活動を継続。子供を預かって運動させてくれることに、喜ぶ保護者もいたという。

 しかし、外出自粛や緊急事態宣言の発令によって状況は一変。「今はほぼ百パーセント休止している。自由練習をしているところもない」と宮川会長。子供たちから会費を徴収して運営費に充てているクラブでは、活動休止に伴って収入がゼロに。経営難に陥り、コーチや指導者の解雇も始まっているという。自身もJリーガーを輩出してきた名門の大阪・枚方FCで代表を務める宮川会長は「加盟クラブの中で、まだ経営をやめたという話は聞いていないが、危機的状況。クラブ経営が政府や自治体の助成金、融資の対象業種として認められない可能性もある」と指摘する。その上で「解雇されたコーチや指導者の中には、それを職業としている人もいる。他に仕事があるわけではないので、みんな途方に暮れている」と嘆く。

 プロ野球の球団やJリーグのクラブを大企業にたとえるなら、地域チームや街クラブは零細。活動休止期間が長引けば、受けるダメージも大きくなる。所属する子供たちに対し、SNSなどを通じてトレーニングの宿題を出すなどしているクラブもあるが、先の見えない不安を口にする経営者は多いという。

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