高論卓説

1年延期も厳しい東京五輪 国民疲弊で追加負担の賛成見通せず (1/2ページ)

 新型コロナウイルスの世界的感染拡大で、安倍晋三首相と国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が電話協議し、東京五輪・パラリンピックの1年延期が決定した。1年後には新型コロナウイルスが終息していて、通常の大会が開催されると読んだのであろう。

 交渉の隣には菅義偉官房長官もいて、政治的な決着が必要だと組織委員会の森喜朗会長が考えた、と私は推察している。その理由は、延期するとなれば、巨額の費用が必要で、東京都とIOCの負担だけでは困難だとみているからではあるまいか。

 バッハ会長は、ドイツ紙の質問に数億ドルの追加費用負担に直面すると明らかにしたという。概算で3000億円規模だとされる。そこへ都と日本政府が応分の負担をすることになる。

 新型コロナで疲弊した国民が、果たして1年後の五輪に興味を持ち、期待するだろうか。想像以上に国民は疲弊していて、それどころではないのではないか。都や政府が、開催のために予想以上の出費をすることに国民が賛成するか不安である。

 国際通貨基金(IMF)は、今年の世界全体の実質成長率をマイナス3%と予測。日本の場合、マイナス5.2%になるという。主要先進国が軒並みマイナス成長に転じるとし、パンデミック(世界的大流行)の長期化や再発があれば、一段と景気の悪化も考えられる。それでも五輪の延期は、国際的にも共感を得ることができるのだろうか。

 一度減速した景気を急に向上させることができるのか、日本も海外経済の失速で輸出も下振れする。スポンサーになっている国内の企業であるゴールドパートナーやオフィシャルパートナーは、延長してくれる余裕があるだろうか。IOCのワールドワイドパートナーの企業にしても大丈夫なのか気にかかる。

 チケットの問題、ボランティアや選手村の問題。さらに選手のエントリーは7月5日、選手選考はそれ以前だから、2月か3月初旬までに新型コロナを退治しておかねばならない。どの問題の解決も容易ではなく、東京ビッグサイトを国際放送センターとして使うことになっているが、巨額の費用が必要となる。

 IOCは、「アスリート・ファースト」を主張する組織だが、感染症の終息が世界同時ならともかく、地域差が生じてくれば、練習やトレーニングが平等には行えず、不参加となる国も出現する可能性がある。アスリート・ファーストは、画餅に帰する恐れがある。

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