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醤油の街から消えた観光客 「観光戦略、ようやく実を結んだのに…」 (1/2ページ)

 醤油(しょうゆ)発祥の地として有名な和歌山県湯浅町。近年は日本食ブームで海外の観光客も増えていた最中、地元の病院で国内初となる新型コロナウイルスの院内感染が発生。風評被害も相まって観光客は激減した。それでも江戸時代創業の老舗醤油会社「角長(かどちょう)」6代目、加納誠代表(70)は「暗い表情はしたくない」と、貴重な道具などを集めた資料館の無料公開を通常通り続けている。

 湯浅町には、江戸や明治期に建てられた古くからの醸造業関係の商家なども多く残る。旧市街地は平成18年、国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)に選定された。

 近年は日本食ブームを背景に海外からも醤油が脚光を浴び、国内外から大勢の観光客が訪れ、ここ数年の観光客数は年間50万人程度で推移していた。

 相次ぐ風評被害

 そんな中、2月に町内の「済生会有田病院」で医師や患者らが相次いで新型コロナウイルスに感染。全国初の院内感染に発展し、病院は一時患者の新規受け入れなどを停止した。

 町内では、宿泊客のキャンセルや「ふるさと納税」の返礼品受け取り拒否など風評被害が相次いだ。町の担当者も「(院内感染を機に)観光客が減少してしまった」と話す。

 天保12(1841)年創業の角長の加納代表も「町を挙げて観光戦略に取り組み、ようやく実を結んだタイミングだったのに…」と悔やむ。

 病院は3月4日に「安全宣言」を出して通常業務を再開。一時は観光客が週末に町歩きを楽しむ姿もみられるなど、回復の兆しをみせていた。

 しかし、全国では感染が一気に拡大。政府が4月7日に緊急事態宣言を発令すると、またもや観光客の足が遠のいた。「日常風景が取り戻せると期待したが、再び活気が失われてしまった」と加納代表。

 資料館に消毒液

 それでも「暗い表情で観光客や買い物客を迎えたくない」と、加納代表は、会社に伝わる創業当時の醤油造りの道具一式や吉野杉の仕込み桶(おけ)、古文書などを集めた資料館の無料公開を通常通り続けている。

 資料館の展示説明は、角長の元社員で近くに住む本下(ほんげ)博美さん(70)が担当。感染防止対策で、マスクを着用して案内し、館内にはアルコール消毒液も置いている。

 角長では例年、資料館には大型連休中、約300人の観光客が訪れていた。

 さらに毎年秋には、小学生たちが醸造蔵で実際に職人の仕事を学べる社会見学も受け入れており、昨年は約2千人が訪れた。

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