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avatarin「アバター」 自分の分身ロボ、世界中に“瞬間移動” (1/2ページ)

 人の分身「アバター」となるロボットを全世界に普及させて瞬間移動を実現させる-。ANAホールディングス(HD)の社員だったavatarin(アバターイン)の深堀昂(あきら)最高経営責任者(CEO)と梶谷ケビン最高執行責任者(COO)は大きな目標を掲げて、4月にANAHDから独立した。折しも新型コロナウイルス感染症の大流行で人の移動が制限される中、アバターには注目が集まっており、ANAHDの経営陣からも応援を受けている。深堀氏は「10万台でもすぐに販売できる」と意気込むが、新型コロナ後のニューノーマル(新常態)にどこまで普及させられるか注目が集まる。

 仮想的に人間を代替

 アバターは、カメラ付きのタブレット端末が人間の「目」と「耳」と「顔」の役割を持ち、移動する車輪という人間の「足」の機能も備えたロボットだ。遠隔地からインターネット経由でタブレットやスマートフォンで操作して、さまざまな場所で人間の代わりに移動したり見たり聞いたりできるのが特徴で、ネット経由でロボットを操作する技術は特許も取得しているという。

 アバターは、人間の代わりに移動させることでさまざまな用途で利用が可能。大分県の商店街で買い物をしたり、香川県の水族館で飼育員の解説を聞きながら巡回したり、石川県の病院で遠隔地からお見舞いしたりすることを実現させている。

 新型コロナの感染拡大が本格化した4月以降、問い合わせが相次いでおり、「両親の見守りで使いたい」「結婚式に出られないので貸してほしい」など、具体的な利用方法の問い合わせが国内のほか欧米や中国などからも来ているという。梶谷氏は「こういう事態が起きないと新技術の必要性が見えにくいのは事実だ」と話す。

 アバターは、あくまでも人間の代わりに瞬間移動を実現させるものだが、深堀氏と梶谷氏は2016年の段階では、困難なテーマの実現を目指す世界的な賞金レース「Xプライズ」のテーマとして提案するほど、本当の瞬間移動「テレポーテーション」の実現性を探っていた。提案したプレゼンの中で、Xプライズ財団創設者の米著名起業家、ピーター・ディアマンディス氏からは高い評価を受けたが、研究者からは実現には程遠いとの声が出たことから、断念。仮想的に瞬間移動を実現させるアバターの開発を目指すことになった。18年3月にはXプライズのテーマにも選ばれ、ANAHDの社内事業として正式にスタートした。

 ただ、それでも社内には「なんで本業(の航空機運航)を置き換えるようなサービスを提案するんだ」との異論が多かったという。梶谷氏は、18年にアバター事業を正式に始めるに当たって役員と議論になることもあったと振り返る。アバターが普及すれば、飛行機を利用しなくなるということで異論が社内から出るのは当然とも言えるだろう。しかし、梶谷氏は「飛行機の利用者は世界では6%にすぎない。94%の人のためにもやりたい」と反論したという。

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