触覚や味覚も伝送へ
アバターは、宇宙事業を実現させる目標を抱き続けているANAHDの片野坂真哉社長の心にも刺さった。昨年10月の最新家電・ITの展示会「CEATEC(シーテック)2019」で、片野坂氏は「(アバターで)アマゾンやエベレスト、南極や宇宙の音を聞き、風を感じることもできるようになる」と述べた。アバターが、触覚も遠隔地に伝送できるようになる未来の姿を説明した。
アバターは将来的には、災害現場など人間が行けないところで活躍するようになることや、頭で思い描くだけで操作できたり、触覚や味覚も含めた全ての人間の感覚を伝えたりすることを目標としている。
ただ、短期的な目標としては、利用する場所や利用方法を多様化させて、安定した利用を実現させることを重視する考えだ。日本でも提供が始まった第5世代(5G)移動通信方式を活用すれば、遠隔地から高精細の画像の伝送や遅延のない操作が可能になる。梶谷氏は「今、アフリカの病院でも使いたいといわれているが、アフリカには第3世代(3G)移動通信方式しか普及していない地域も多い。世界中で普及させるためには、最新の通信環境ではなくても安定して動くようにしないといけない」と話す。技術開発と、普及に向けたマーケティングの両立を図っていくため、さまざまな企業ともパートナーシップを組む方針だ。(大坪玲央)
≪焦点≫宇宙ステーションからの眺め、年内に実現
アバターインは目標の一つだった宇宙に早くも進出した。国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」から、アバターを操作して宇宙や地球を眺めることが年内に実現する見通しとなった。
アバターインの宇宙事業は、きぼうの船内にアバターインの開発した専用アバター「スペースアバター」を設置して地球から操作し、船内環境を眺めたり、きぼうの外の宇宙や地球を宇宙から眺めたりするというもの。アバターのカメラで撮影した4K動画がインターネット回線を通して地球で視聴できるようになる。
宇宙ステーション補給機「こうのとり」9号機は5月に、スペースアバターを搭載してきぼうに到着しており、年内には一般向けにスペースアバターを操作するイベントが開催される。
「宇宙で月の上を歩くことも可能になる」。ANAホールディングス(HD)の片野坂真哉社長は、昨年のシーテックで、アバターを使った擬似的な宇宙旅行体験についてこう説明したが、今回のスペースアバターの活用は、“宇宙旅行”の第一歩といえそうだ。
アバターインのアドバイザーを務める4人の有識者の一人、東京大大学院の中須賀真一教授(航空宇宙工学)は「現段階では人が宇宙に行く費用や危険性は大きいが、宇宙に実際にいるようなアバター体験が人類の思考にどのような変化をもたらすか、世界初の試みを楽しみにしたいと思います」とコメントしている。
【本社】東京都中央区日本橋室町3-3-9 日本橋アイティビル5階
【資本金】2億円
【売上高】非公表
【従業員数】21人(6月1日時点)
【事業内容】アバターの開発と普及