リーダーの視点 鶴田東洋彦が聞く

大豊建設・大隅健一社長(2-1) 2つの特殊技術でインフラ支える (2/3ページ)

 ゲリラ豪雨に対応

 --近年の異常気象でニーズが高まった

 「これら特殊技術はゲリラ豪雨などの異常気象に対応する地下貯留施設の建設などに不可欠として注目されている。『バケツをひっくり返したような雨』といわれる1時間降水量50ミリを超す雨は、1980~84年の年平均発生回数213日から2015~19年には331日と5割強増えた。都市部ではこうした集中豪雨に道路舗装も加わり、雨水処理能力が追いつかない。浸水対策としての地下空間利用、しかも大深度化、大断面化ニーズに応えるには立て坑を掘って地下に構造物を造るニューマチックケーソン工法が適する」

 100年企業へ新事業育成の種まき

 --20~22年度の中期経営計画を策定した

 「20年は100年企業を目指し新たな企業価値を創造する出発の年と位置付け、22年度に売上高2000億円を目指す。自然災害の増加や人口減少・成熟社会の到来を見据え、既存の土木と建築をメインに、新たな事業を育てるとともに種をまく。既存事業を伸ばすため二枚看板を生かして防災・減災事業を拡充する。非住宅事業も強化し、物流施設や工場、公共建築物に注力する」

 「新事業への対応としては維持修繕事業、首都圏事業、CLT(板材を直角に交わるよう積層接着した木質構造)事業・不動産事業を育てる。そのためには資本提携やM&A(企業の合併・買収)も視野に入れる。CLTについては3月に開設した技術研究所(茨城県阿見町)で新しい木質材の活用と耐震壁などの構造研究に取り組み、多様な建築物に展開したい。将来の布石としてPPP(官民連携)などに取り組む。売り上げ目標2000億円のうち10~20%は新規事業で賄いたい」

 マダガスカルで実績

 --海外展開は

 「マダガスカルと台湾、アジア・アフリカなどのODAを中心に実績がある国・地域を軸に展開している。台湾では現在、シールド工法による地下鉄工事を2カ所で施工中だ。台北市と高雄市を結ぶ全長345キロの台湾高速鉄道のうち『C220』工区約18キロの橋梁、トンネルなどの土木工事を担当したほか、『S220』工区の新竹駅舎などの建設を請け負った。一方、マダガスカルではトアマシナ港拡張工事とアロチャ湖灌漑(かんがい)システム改修工事を行っている。1977年のナモロナ水力発電所建設以来、一度も撤退することなくインフラ整備に貢献してきた」

 「これが認められて2009年完成のエホアラ港は同国の高額紙幣の絵柄に採用されたほか、国家勲章も2度授与。創業者の内田弘四も表彰され、これを機に工学系学生向け奨学金制度を創設し、70周年の昨年には制度を拡充した。19年8月に横浜市で開催されたアフリカ開発会議に出席するため来日した同国大統領からインフラ整備への協力を求められ、今後も積極的に貢献することを約束した」

 --新型コロナウイルス感染拡大の影響が心配だ

 「新型コロナの影響は2~3年続くだろう。収束が見えない中で世界的に経済活動が縮小・減退し、国内経済にも不透明感が強まり、民間設備投資は厳しい状況が続くとみている。社内の働き方だが、在宅勤務や時差出勤に切り替えられる部署は継続的に実施していく。工事現場では毎日の検温など体調管理の徹底に取り組み、3密(密閉・密集・密接)にならないよう指導していく」

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus