金融

金融庁が7月で発足20年 コロナ、仮想通貨など新たな課題に直面 (2/2ページ)

 問題を解消するため30年7月、金融庁は不良債権処理の象徴ともいえる立ち入り検査を担ってきた「検査局」を廃止し、業務を他の局に移した。金融機関の健全性を厳しくチェックする強硬姿勢を改め、銀行経営の自主性と融資先企業の成長を狙った。

 昨年12月には立ち入り検査などの方針を示した「金融検査マニュアル」も廃止。厳しい処分を科してきたため「金融処分庁」などと揶揄(やゆ)された金融庁だが、「“育成庁”に変わる」(幹部)と強調する。

 また、新型コロナの感染拡大を受け、今月には地方銀行などを念頭に公的資金による資本注入を受けやすくする改正金融機能強化法が成立した。

 地域金融機関の健全性を保ちつつ、貸し出しによる企業の資金繰り支援を後押しする。麻生太郎金融担当相は「将来を見据えた先手の対応」と説明。新型コロナ問題の長期化に備える。

 一方、金融庁は新たな課題にも直面している。

 30年1月に仮想通貨交換業者コインチェックから当時のレートで約580億円分の仮想通貨の流出が明らかになった。金融庁が全ての交換事業者を検査すると杜撰(ずさん)な管理体制が次々に発覚。行政処分を連発する事態に発展した。処分は金融庁が“お墨付き”を与えた登録業者にもおよび、金融とITを融合したフィンテックに対する金融庁の対応の甘さが露呈した。

 また銀行業界は低収益にあえぎ、とくに地域金融機関は深刻だ。

 人口減少に伴い資金需要が低下し、日本銀行の低金利政策で利ざや(貸出金利と預金金利の差)も縮小。全国地方銀行協会によれば、令和2年3月期は64行のうち約70%が最終減益もしくは赤字。地域金融機関は新たなビジネスモデルを模索するものの、経営環境は厳しく、金融庁が目指す“育成庁”への道のりもまた遠い。(大柳聡庸)

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