高論卓説

「新規感染者数」だけみても駄目 警戒すべきは空港検疫の状況

 日々発表される新型コロナウイルスの新規感染者数に神経を使う日々が続いている。爆発的な感染拡大が起きれば、すわ緊急事態宣言の再発令、そして休業要請、自宅待機…とつながる可能性を連想してしまう。

 4月の緊急事態宣言にあたって政府は「直近1週間の人口10万人当たりの新規感染者数が5人以上」という基準を示していたし、既に撤廃された東京都の独自警戒情報「東京アラート」は「直近1週間平均の1日当たり新規感染者数が50人以上」だった。いずれも基準は新規感染者数。日々の新規感染者数の増減に注目が集まるのはやむを得ない。

 が、新規感染者数だけをみていては駄目だ。自分が編集長を務める雑誌で「コロナ徹底検証」という特集企画を作る中で得心したのが、新規感染者数のデータをさまざまなデータと組み合わせることの重要性だ。

 まず、「PCR検査人数」を常に見ておく必要がある。例えば9日は1万1505人が検査を受けて陽性者数は332人だった。4月時点では検査態勢が貧弱で検査を受けたくても受けることができない隠れ陽性患者が大勢いたが、今は検査態勢の整備が進んだ(11日時点での最高検査人数は1日当たり3万1653人)。検査数が増えたことで陽性者が表面化しているわけだ。

 またPCR検査のややこしい点は、陽性的中率というものがあること。罹患(りかん)している人の割合が多い集団で検査を行う場合には的中率は上昇し、罹患している人の割合が少ない集団で検査を行う場合には的中率は低下する。つまり、日々発表される新規感染者数は「PCR検査を増強したからであり、的中率も低下している可能性がある」と冷静に捉える必要があるのだ。

 もう一つ重要なデータが、「入院治療者数」「重症者数」の推移。これは医療崩壊を防げるかどうかの指標になる。同じ9日でみると新規の入院治療者数は153人、重症者数は前日比7人減だった。

 医療関係者が特に警戒するのは、「退院数を大幅に上回るペースで新規入院数が増えているか」である。しかし、退院・療養解除も順調に進んでいることから、医療崩壊の兆候のようなものがあるわけではない。

 これらのデータを組み合わせてみていくと、新規感染者数が多いからといって右往左往する必要はない、ということが理解できる。

 ただし、懸念点がある。北海道大学の西浦博教授らのグループが警戒するのは海外との往来解禁が与える影響だ。コロナへの罹患率の高い国からの入国が増えれば、空港での検疫体制をどのように強化したところで感染爆発が起きるという。「国内でくすぶり続けているクラスター(感染者集団)を丹念に潰していく」だけでなく、「海外から持ち込ませない」というのが、今後の鍵になりそうだ。ちなみに13日には空港検疫で1645人がPCR検査を受け、20人が陽性だった。

 これらのデータは、厚生労働省や各自治体が毎日発表しており、多くのメディアが一覧できるダッシュボードを作って日々更新している。ほかにも「実効再生産数」「K値」など、さまざまな指標があるが、万能といえるような指標はない。さまざまなデータを分析し、試行錯誤の中でコロナと向き合う日々を覚悟しなければならない。

【プロフィル】山田俊浩

 やまだ・としひろ 早大政経卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。週刊東洋経済の編集者、IT・ネット関連の記者を経てニュース編集長、東洋経済オンライン編集長を歴任。2019年1月から週刊東洋経済編集長。著書に『孫正義の将来』(東洋経済新報社)。

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