構造改革もまだ積み残っている。昨年は半導体事業の売却や液晶パネル生産からの撤退など事業の選択と集中をさらに進めたが、太陽電池事業で中国大手GSソーラーへのマレーシア工場などの売却が中国当局の外国送金に関する審査長期化などの影響で完了していない。赤字が続くテレビ事業の見極めも求められる。
コロナで中国事業打撃
多くの課題を抱えながらも、今年6月に創業家以外では3代目の山下俊彦氏と並び最長の在任9年目を迎えた津賀体制。そこに新たな難題として立ちはだかるのが新型コロナの感染拡大だ。
中国・武漢から世界に広がった感染症は、中国国内に約80カ所の生産拠点を持つパナソニックのサプライチェーン(供給網)を直撃。製品の供給に支障が出たことに加え、自動車・航空産業への打撃で販売面への影響も広がっており、7月29日時点で今年度の業績予想を公表できていない。
今後のパナソニックの業績について、大和証券の榮氏は「近年の構造改革で赤字事業の止血が進み、当面は新型コロナ禍のマイナス影響を吸収できるとみられるが、成長ドライバーとなる事業がない限り外部環境に業績が左右される状況は続くだろう」と分析する。
6月に開かれた株主総会に議長として登壇した津賀社長は、新型コロナ禍について「100年に一度の難局だが、100年企業である自らを変える機会にしたい」と強調。感染対策に伴うテレワークなどの新たな需要をチャンスとしてつかみたい考えだが、業績の低空飛行が続く現状に株主からは津賀社長の経営手腕へ厳しい目が注がれている。