こうした経緯も踏まえ、政府は今年5月、合併の制限を緩和する特例法を成立させた。11月に施行される。
特例法適用の「第1号」として有力視されるのが、青森市に本店を置く青森銀行とみちのく銀行だ。両行は昨年10月、包括的な提携検討で合意。今年7月からはATM(現金自動預払機)の相互開放を始めた。両行が一緒になれば、総資産が5兆円を超える大型の銀行グループとなる。
ただ、経営統合や合併を実現するには、理念や企業風土が合わなければ話が進まない。労力も経済的コストもかかるため、簡単な話ではない。
地銀協の大矢氏も地銀が生き残るには、「再編だけが唯一の方法ではない。何を実現するかが大事だ」と強調する。
現実に昨年来、目立っているのは異業種との連携だ。
SBIホールディングスは「第4のメガバンク構想」を掲げ、地銀4行と資本提携した。SBIの北尾吉孝最高経営責任者(CEO)は「リージョナルな(地域の)銀行からナショナルな(国の)銀行に転換したらどうか」と述べるなど、地銀再編に意欲的だ。
野村証券は山陰合同銀行(島根県)、阿波銀行(徳島県)と相次いで包括提携した。
これらの提携は地銀にとって、大手に後れを取ってきたデジタル戦略の推進につながるほか、商品ラインアップの充実や顧客基盤の強化につながる。
「これまでと違った経営努力をしてもらわないといけない」。麻生太郎財務相兼金融担当相はこう述べ、地銀に対してハッパをかけた。
日本銀行は平成29年10月に公表した「金融システムリポート」で、金融機関の店舗数に関する国際比較を行っている。人口当たりの比較では、日本は25店と、主要国でトップのスペインの4割弱。米国の7割程度にとどまる。
ただ、全国約2万4千カ所にある郵便局を含めると、日本の人口当たり店舗数は44店となる。「オーバーバンキング」が指摘されるドイツとほぼ同じ水準だ。
一方、可住地面積当たりの店舗数を比較すると、日本は突出して多い。日銀は「狭い国土に銀行店舗が密集することで、預金獲得競争が激しくなった。預金関連手数料を課すことを前提としないビジネスモデルが定着していった」と分析している。(経済本部 米沢文)