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耕作放棄地に「希望の放牧」 荒れ地の象徴を食べる切り札たち (1/2ページ)

 荒れ地の象徴、黄色い「セイタカアワダチソウ」を牛たちが食べ尽くした。栃木県茂木(もてぎ)町にある耕作放棄地を活用した牛の放牧場で16日、農林水産省の有識者検討会による視察が行われた。増える耕作放棄地を農地のまま維持する有力な方策として課題を探るためだ。低コストで手がかからず、山の斜面でもできるなど利点が多い放牧は、人口減少時代に国土を守る切り札として期待がかかる。

 20日間できれいに

 山あいを流れる那珂(なか)川のほとり、和牛繁殖農家「瀬尾ファーム」の放牧場。その一区画でこの日、今年新たに借りた耕作放棄地での放牧が始まった。

 10頭の黒毛牛たちは、かつてのタバコ畑を覆う雑草へわれ先にと向かい、首を突っ込む。黄色い花が満開となったセイタカアワダチソウにも食いつきがよい。

 代表の瀬尾亮(まこと)さん(66)は「50アールを20日間くらいできれいに食べてくれます」と説明する。「セイタカアワダチソウはあまり好まないが、ほかの草がなくなったら、食べてしまう」

 キク科の多年草であるセイタカアワダチソウは、秋の今が盛り。魚の「ブラックバス」とともに、北米原産で日本生態学会の「日本の侵略的外来種ワースト100」に入っている。その強烈な繁殖力で、耕作放棄地や道路わきに生い茂る。

 何とか農地のままに

 もしも、人の手が入らなくなったら、農地はどうなるのか。その先取りを強いられた光景が福島にあった。東京電力福島第1原発事故により全村避難し、無住となった葛尾(かつらお)村。事故から2年後の秋、農地一面をセイタカアワダチソウが埋め尽くしていた。

 わが国は人口減少、世界一の高齢社会となり、中山間地を中心に農地の維持が今後いっそう難しくなる。今回、視察を行った農水省の長期的な土地利用を考える有識者検討会が放牧に着目したのも、42万ヘクタールと山梨県の面積に迫る耕作放棄地を何とか農地のまま維持したいがためだ。

 視察での質疑で、瀬尾さんは農地への復元について「牛が雑草をある程度食べた後、トラクターで耕せば、きれいな畑になる」と説明。中山間地での放牧の意義についても「できれば平地がよいが、牛の飲み水のため自動給水システムが必要になる。傾斜地なら地面から水が湧き出てくるため、水の心配がない点は楽ですね」と語った。

 「海自魂」で復旧

 瀬尾さんは茂木町に隣接する那須烏山(なすからすやま)市の出身。海上自衛隊で護衛艦の機関長などを務め、平成14年に早期退職して妻の実家の山林を受け継いだ。林業を模索したものの、どう計算しても経営が成り立たず、兄が酪農をしていたことから和牛の繁殖を目指した。

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