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紙の本が売れない時代 「脱・紙媒体」模索する出版業界の行方 (1/2ページ)

 街歩き講座やお取り寄せグルメ販売など、出版業界で書籍販売以外の事業の取り組みが広がっている。紙の本が売れないといわれる時代、「脱・紙媒体」への模索が続く。

 現役編集者が指導

 「東京・階段と坂のある街探訪」「目指せ! エンタメ系新人賞入門クラス」「ホースセラピーへの誘い」-いずれも新潮社が開設する「新潮講座」の講座名だ。平成24年に新規事業として始め、現在は3カ月ごとに60講座を入れ替え、年間240講座(継続含む)を開設する。担当する上田恭弘・図書編集室長は「出版社は従来、書店を相手にビジネスをしてきたが、読者(消費者)と直接つながる事業も必要と考えた。消費者の知的好奇心にこたえたいとの思いもある」と説明する。

 一般人を対象とした教養講座は新聞社や放送局、自治体なども開設しているが、出版社ならではといえるのが、現役編集者が講師を務める講座がある点だ。創作テクニックや作品投稿にあたっての注意点など現場に即して実践的な内容を学べることから、作家を志す人などで満席となることも。校閲技術を学ぶ講座や街歩きの講座も人気という。新型コロナウイルスが感染拡大した4~6月は休講を余儀なくされたが、その後はオンラインでの講座も開設、地方在住者の利用が可能になるなどさらなる事業の拡大に期待がかかる。

 同社はまた、21年にオンラインショップをオープンし、文芸作品のキャラクターグッズなどを販売。こうした商品はかつては販促用で、それ自体を販売することはなかったという。コミック&プロデュース部の田中寧部長は「漫画は別にして、活字の本の売り上げは右肩下がりが続く。文芸というコンテンツから派生する商売ができないかと、コミックでは当たり前だったキャラクタービジネスを文芸でもやってみようと考えた」。

 小林多喜二のプロレタリア小説「蟹工船」の実写映画化に合わせて販売した本の表紙をデザインしたTシャツが話題になるなど、売り上げを順調に伸ばしてきた。現在は、中国風異世界を舞台にした小野不由美のファンタジー小説「十二国記」のキャラクターグッズや、イラストレーターで絵本作家のヨシタケシンスケさんのイラスト入りグッズなど2千アイテムを扱う。

 こだわりの食品

 文芸春秋は10月1日、食のお取り寄せサイト「文春マルシェ」をオープン。出版不況がいわれる中、新たな収益源をさぐるため昨年7月に立ち上げた「新規事業開発局」が企画した事業で、同社の雑誌や書籍のメイン読者である50~70代にリアルな商品を売るプラットフォームという位置づけだ。

 当初、来春オープンを目指していたが、コロナ禍を受け準備を前倒ししてオープンにこぎつけた。オープン時の品ぞろえは肉や魚介、米、スイーツなど121商品で、年内にさらに40~50商品を追加する。扱う商品は、持ち前の取材力や編集力を発揮し、生産者やシェフなど「食の世界」のプロとコミュニケーションをとり、素材や鮮度、調理法にこだわったという。

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