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紙の本が売れない時代 「脱・紙媒体」模索する出版業界の行方 (2/2ページ)

 読み応えのある商品の開発ストーリーは出版社ならでは。例えば、「おうちで揚げない海老カツレツ」では、商品開発担当者がレンジで温めるだけでカリッとした衣に仕上げるため半年以上かけて試作を繰り返す奮闘ぶりが綴られている。柏原光太郎局長は「50代、60代は体力もあり、バブルを経験していて好奇心も旺盛。食から始めて、将来的には健康、介護、相続などのリアルな商品にも取り組みたい」と話す。

 トーハンはコワーキングスペース

 出版取次大手のトーハンはコワーキングスペース事業に参入。コワーキングスペースは、さまざまな業種の人が同じスペースを共有しながら仕事をする場所のことで、「ハカドル」の店名で3月に虎ノ門店(東京都港区)、7月に新宿三丁目店(同新宿区)を出店した。

 書店と出版社をつなぐ流通業であるトーハンが同事業を始めるのは、書店に新しい付加価値をつける狙いもある。全国の書店数は平成8年の約3万店をピークに減少を続け、現在は約8千店とピーク時の3分の1以下。書籍と顧客の接点を創出するため、過去にはレンタルビデオ店や文具店、カフェなどの併設を提案したこともあった。小野晴輝専務は「書店の営業形態を変えていく必要がある。コワーキングスペースは、書店との親和性が高く、これから伸びるマーケット。さまざまなタイプを開発し、書店を支えていければ」と話す。

 店内はWiFiと電源が完備され、カフェに比べ広いデスクスペースでコーヒーが自由に飲める。書棚にはビジネスパーソン向けに厳選したビジネス書や教養書が並べられ、閲覧や購入ができるほか、書籍の要約を試読できるサービス「セレンディップ」も利用できる。新型コロナの感染拡大による緊急事態宣言解除後にオープンした新宿三丁目店は、ウイズ・コロナに対応してWEB会議などに利用できる1人用の部屋を増やした。

 コロナ禍でテレワークが広がる中、自宅でもオフィスでもない仕事場所のニーズが高まっており、今後はベッドタウンやターミナル駅そばなどへの出店も計画している。(平沢裕子)

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