--現在の研究をどのように発展させたいですか
鈴木 私たちの研究成果は、大崎クールジェンプロジェクトの第3段階に活用されるわけですが、これまでの研究で明らかになった成果や技術などを整理し、スムーズにバトンタッチをすることが当面の目標です。大崎クールジェンプロジェクトで取り組んでいる次世代石炭火力発電技術は、石炭をそのまま燃やすのではなく、可燃性ガスに変換してガスタービン発電を行い、さらにその排熱を利用して蒸気タービン発電を行うことで、より高効率で発電することができます。化石燃料が燃えるとき、CO2が出ることは避けられませんが、Jパワーは、発生するCO2そのものを回収し封じ込める「CO2回収・貯留技術(CCS)」の研究開発も進めています。今、脱炭素化社会の実現に向けて「脱石炭」に世界的な関心が集まっています。大崎クールジェンプロジェクトで取り組んでいる次世代火力発電は、CO2を出さない発電技術であり、「カーボンニュートラル」を実現するための有力な方法のひとつであると確信しています。その可能性を信じて、実用化に向けた取り組みにつなげていきたいです。
野崎 「カーボンニュートラル」の考え方は、CO2の排出量と吸収量がバランスを保っている状態を指します。昨今の電力事情より、今後も一定期間は高効率な石炭火力発電所が必要とされるため、火力発電所からある一定量のCO2排出は避けられないと考えられます。しかし、相応のCO2吸収量が見込めるのであれば、カーボンニュートラルを達成することは可能です。現在、カーボンニュートラル達成に向けて、CO2を有効利用するカーボンリサイクル技術が求められています。そのために、「CO2回収・利用技術(CCU)」の研究開発も進めています。CCUは、有価物等を製造する際にCO2を利用する技術で、複数の分野で技術開発が行われています。その中で、CO2をコンクリートに炭酸塩化させ、固定化する研究を進めています。このように、CO2を有効利用する「カーボンリサイクル」は、カーボンニュートラル実現のカギを握る技術ですが、まだ発展途上の部分が多く、解決すべき課題を抱えています。社会実用化に向けて、これらの課題を解決し、世の中のためになるよう日々の研究を進めていきたいです。
長瀬 カーボンニュートラルを実現するには、電化をすすめていくことと、再生可能エネルギーを増やすことが重要です。しかし、鉄鋼の製造工程など、電気では難しいものもたくさんあり、カーボンフリーな化石燃料を使った水素エネルギーの開発でカバーしなければなりません。水を電気分解して水素を作る方法がカーボンフリーとしては理想的ですが、それだけでは全てのエネルギー供給を賄うことはできず、化石燃料から水素を作る方法が必要になってくると考えています。化石燃料から水素をつくる方法としては、石炭とLNGの2種類があります。多くの場面で使われているLNGにのみ頼ることは、地政学的な視点からも、供給面で不安が残るので、石炭の活用は欠かせません。Jパワーが参画している日豪水素サプライチェーンを実用化に結び付け、日本における水素社会の構築に貢献していきたいです。また、個人的な夢は「カーボンネガティブ」の実現です。それにはバイオマスを取り入れることが重要であると考えています。ガス化設備に向くバイオマスの調達にも力を入れていきたいです。