最優秀層の学生は集まるのか
ファイナンシャル・テクノロジー分野の応募資格には、「大学・大学院で身に付けた数学、物理学、情報工学、金融工学、統計学、計量経済学、データサイエンス等の専門分野の知識を活かし、新たな金融商品の開発やモデル開発、ポートフォリオ最適化、リスク管理、データマネジメント等の業務で、プロフェッショナルとして高いパフォーマンスを発揮すること」という期待要件が記されている。
大手銀行では、総合職で採用された“エリート行員”であっても、ほぼ横並びの評価報酬制度が一般的だった。複数の支店を経験しながらキャリアを積み、40~50代でようやく支店長に昇格し「一国一城の主」となる。本店で執行役員、役員と出世できるのはほんの一握りだ。
三菱UFJ銀は2019年に人事制度を改定し、若手であっても優秀な人材を登用しやすくなるようにした。昨年の春闘では給与を一律に引き上げるベースアップ(ベア)を廃止し、個人の人事評価に基づいて賃上げ率を決める仕組みを導入。横並びの人事制度の見直しを進めている。デジタル化の進展や新型コロナウイルス感染拡大に伴うテレワークの普及で、オフィスに縛られない多様な働き方も広がっている。
社会に出て1年目から年収1000万円の大台に乗る可能性もあるという三菱UFJ銀の専門職枠採用。即戦力となり得る学生は本当に集まるのか。破格の好待遇を提示する外資系企業などと比較した場合、最優秀層の若者の目に、日本のメガバンクの報酬は魅力的にどう映るのか。また初任給から差が出ることで、総合職で採用された同期行員のモチベーションにどのような影響を与えるのか。
未知数の部分も少なくないが、経済環境の大幅な変化もあり、終身雇用を前提として、幅広い分野でさまざまなキャリアを積んでいくという日本型雇用が崩れつつあるのは確かなようだ。