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仮想通貨でHDD“買い占め”横行…背景にビットコインによる膨大な電力消費 (2/2ページ)

SankeiBiz編集部
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 在庫が底をついたのはグラボだけではない。4月に入ると、データを保存する部品である内蔵ハードディスクドライブ(HDD)が品薄状態に。SNSでは「パソコンショップから消えた」という報告が相次いだ。比較的新しい暗号通貨で、計算能力の代わりにディスクの空き容量を使う「チアコイン」が各国でブームになったため、グラボと同様、買い占められたとみられている。

 パソコン専門店のドスパラは4月以降、グラボと8テラバイト(TD)以上の大容量内蔵HDDの購入をそれぞれ1人1つとする制限を設けた。オークションサイトでは定価1万5000円程度のHDDが10万円で出品されるケースもあり、品薄状態に乗じた転売も横行しているようだ。

ビットコインの消費電力はオランダ以上

 チアコインが注目を集めたのは、自然環境への負荷を低減させる効果が期待されているためだ。ビットコインの場合、マイニングに膨大な電力を必要とする。このため、化石燃料による発電で温室効果ガスが増えると懸念する向きもあったのだ。

 英ケンブリッジ大学が公表している「ビットコイン電力消費指数」によると、5月26日午前時点でのビットコインの電力消費は112.57TWh(テラワット時、テラは1兆)で、世界の総電力消費量の実に0.52%を占めている。2019年の各国の電力消費と比較すると、オランダ1国分よりもやや多く、世界全体では33位に位置する。

 米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)も今月、マイニングが環境に与える悪影響についてツイッターで言及し、同社の製品をビットコインで決済する取り組みを停止すると発表した。2月には15億ドル(約1600億円)分ものビットコインを取得したテスラが態度を翻したことで、ビットコインの価値は一時急落した。

 一方、「環境にやさしい」とされるチアコインは中国の取引所、OKEx(オーケーイーエックス)で取引が始まっているが、国内の大手取引所ではまだ取り扱われていない。

 暗号資産交換業者のコインチェックの担当者は「相場への影響を鑑みて、日本でチアコインの人気が出るかどうかについては発言を控えたい」とした上で、「一般論として、暗号資産を発行する団体のビジョンや活動実績、技術力のみならず、環境にやさしいという特徴はユーザーの選択を後押しするものになる可能性はあるとは考えている」とした。消費電力の問題をテクノロジーで乗り越え、環境保護に努める動きが暗号資産業界で強まっているのだという。

 「プルーフ・オブ・ステーク(PoS)」と呼ばれる膨大な電力やマイニング機器を必要としない方法で生成される暗号資産も存在しており、「ビットコインに次いで時価総額が高いイーサリアムでも、そうした方式への移行が始まっている」(コインチェックの担当者)という。

 米ツイッターのジャック・ドーシーCEOが設立した電子決済サービスのスクエアも昨年12月、ビットコインで使用する電力を再生エネルギーでまかなう事業会社を立ち上げた。暗号資産に関心がない人にとっても、ブームの余波を無視することができない状況は続く。マイニングの過程で発生する膨大な電力と化石燃料の問題。暗号資産はすでに地球規模で取り組むべきテーマになっているといえそうだ。

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