プログラミングで意外な成長
子供を対象としているとはいえ、失敗から学ぶことを促す勉強法も重要だ。学習塾の「栄光ゼミナール」で知られる栄光は、東京都内を中心に11教室で、幼児~小学生向けにプログラミング教育専門の「栄光ロボットアカデミー」を運営している。学習塾と比べれば規模は大きくないが授業内容は本格的だ。小学3~6年生は定員8人のクラスで、教育版のレゴブロックを組み立てて、自作のロボットを動かし、ロボットに取り付けたセンサーがどのように役立てられるかなどを学ぶことができる。
栄光によると「授業のほとんどはトライ&エラーのスタンスです。自分でロボづくりやプログラミングをして、その挙動から次の課題を見つけていくことになっています」(広報担当者)。当然、失敗を嫌がる子供もいるが、ロボットのプログラミングでは「失敗するのは当たり前だ」と教え、「次にこうしたらどうなるか」と関心を持たせる授業で子供の意識を変えていくようにしている。「将来に役立つからプログラミングを学ばせたい」と入塾させる保護者が少なくないという。トライ&エラーの授業が意外な成長につながることもある。
「保護者の方から聞いた話ですが、以前は悪い点数のテスト用紙をランドセルに隠していたのに、悪い点数でも見せるように態度を変えたそうです。『この間違った問題はこうすると正解になるんだ』と自分で説明できるようになったから、ということでした」(広報担当者)
プログラミング教育推進の主な理由として、論理的思考力の育成や、2030年に最大79万人のIT人材が不足する見通しが挙げられている。子供たちの意識改革には政府が目指す教育改革を超える価値がありそうだ。
お金をかけずに無料ソフトで
ゲームソフトや塾にお金をかけずとも、子供向けの無料プログラミング学習ツールで学ぶこともできる。米マサチューセッツ工科大が開発した「Scratch(スクラッチ)」は、「前に歩く」「ニャーと鳴く」などの命令が書かれたブロックを組み合わせ、画面上のネコを意図した通りに動かすことでプログラミングの基礎を学ぶソフトだ。パソコンとネット環境さえあれば個人でも無料で利用できる手軽さもあり、多数の小学校で採用された実績を持つ。
「プログラミング的思考」を学ぶという小学校の授業形式は学校によっても異なり、パソコンを使わず、カードやボードゲームなどを用いる「アンプラグド・プログラミング教育」を採用するケースもあるという。2022年度からは高校の「情報I」でプログラミングが必修化されるが、小学校時代に実際にパソコンを触った経験があるかどうかによって、教育格差が拡大する懸念も指摘されている。
「Scratch」のほか、マイクロソフトの「MakeCode」や「教育版マインクラフト」、ソニーの「MESH」、江崎グリコの「グリコード」など各社から有料・無料のプログラミング学習教材がラインナップされているが、こうした教材を活用し、自宅学習で補えるかどうかが、格差是正の鍵を握っているともいえそうだ。
一方、本格的にプログラミングを学びたい大人向けには、オンラインで現役プログラマーの指導を受けるサブスクリプション型のサービス「SAMURAI ENGINEER Plus+」(SAMURAI)などのビジネスも登場している。年齢に関係なく積極的にプログラミングを学ぶ機運が高まりつつある。
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