金融

「中国のビットコイン採掘時代は終焉」 採掘の全面禁止令で業者壊滅も (1/2ページ)

 暗号資産(仮想通貨)の代表格である「ビットコイン」の運営に、大きな地殻変動が起きている。仮想通貨の取引に必要なコンピューター処理を担い、報酬として新たな通貨を得るマイニング(採掘)を中国政府が全面禁止したためだ。背景には世界的な普及を狙うデジタル人民元との競合を避けたい思惑がある。中国の採掘業者はかつて、世界のビットコインの処理能力の4分の3を占めるなど運営を牛耳ってきたが、壊滅に追い込まれる可能性も出ている。

 轟音(ごうおん)立て

 「ビットコインの採掘と取引に打撃を与える」。中国国務院(政府)は5月、「金融リスクの断固とした予防・制御」に向けてそう宣言した。政府は従来もコインの国内取引を規制してきたが、採掘事業の禁止令は初めてだ。中国人民銀行(中央銀行)は6月、仮想通貨の関連業者に資金を提供しないよう金融機関を指導。範一飛副総裁は7月の記者会見で、ビットコインなどの仮想通貨が「投機や資金洗浄(マネーロンダリング)の手段」になっていると指弾した。

 4月に最高値の6万4800ドル(約710万円)をつけた1ビットコインの価格は、中国当局の規制強化に前後して暴落し、一時3万ドルを割り込んだ。

 仮想通貨の運営は、取引承認に必要な演算処理を行う世界各地の採掘業者が支えている。大規模な採掘用コンピューターには大量の電力が必要となるため、安価で安定した電力が得られる場所に採掘業者が集中。2017年ごろから中国四川省の水力発電所や新疆(しんきょう)ウイグル自治区の火力発電所付近では、雨後のタケノコのように採掘拠点が建設され、19世紀の米西部金鉱に採掘者が殺到した「ゴールドラッシュ」にも例えられた。

 記者は17年7月に四川省カンゼ・チベット族自治州の山間部を訪問。道路脇に落ちて横転した乗用車や巨大な落石跡を横目に見ながら険しい山道を2時間ほど車で走ると、水力発電所の敷地内に設置された採掘拠点を発見した。プレハブ2棟の内部には採掘用コンピューターがぎっしり詰め込まれ、数十の大型冷却ファンが「ヒューン」という轟音を立てながら回転していた。

 四川省でのビットコイン採掘事業に参画していた北京の起業家は当時、産経新聞の取材に「豊水期に電力が余って操業時間を短縮していた水力発電所が、採掘拠点の建設によって活性化し、雇用が生まれ、地域経済が好転した」と地元へのメリットを語った。地元当局も採掘業者を積極的に誘致していた。

 デジタル人民元に軸足

 だが、中国誌・財新(電子版)は7月、当局の採掘禁止令によって国内の業者が次々と廃業している様子を報道。採掘事業で数十億元(数百億円)の資産を築いたという男性は、隣国のカザフスタンやカナダ、米国に視察スタッフを送って採掘拠点の移転を計画していると明かした。

 地元当局との間でウィンウィンの関係だったはずの採掘事業を、中国当局が切り捨てるのはなぜか。仮想通貨に詳しい近畿大の山崎重一郎教授は「豊富な電力資源を利用して手っ取り早く外貨を稼ぐという段階が終わり、デジタル人民元(の普及)に軸足を移すようになった」と分析する。

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