西の「将棋の聖地」といわれる関西将棋会館(大阪市福島区)の大阪府高槻市への移転に伴い、同市が建設支援にクラウドファンディング(CF)を始めたところ、わずか1週間足らずで4千万円を超えた。年末までに1億円を目標にしており、滑り出しは上々。開始初日には300万円の「プレミアム指導対局」が売れ、22人の棋士の直筆揮毫(きごう)が入る20万円の「記念御朱印帳」(20セット)といった記念品は早くも完売し、藤井聡太棋聖(19)=王位=関連の扇子も人気。出品している日本将棋連盟は、記念品の追加投入などを検討している。
築40年で老朽化
現会館は地上5階建てで、大山康晴十五世名人の主導で昭和56年に約5億円で完成した。江戸時代、徳川将軍の前で年に一度、対局が行われていた江戸城本丸の御黒書院(おんくろしょいん)を模した対局室を5階に設けた。
数々の名勝負が行われ、昨年7月には第91期ヒューリック杯棋聖戦(産経新聞社主催)の第4局が5階の「御上段(おんじょうだん)の間」で指され、当時七段の藤井棋聖が初タイトルを獲得した。
しかし築40年を迎えて老朽化が進み、移転や建て替えの検討が急務となった。令和元年8月、移転先として、以前から将棋での文化振興を目指していた高槻市が名乗りを上げた。
連盟は今年2月、臨時棋士総会を開いて高槻移転を決定。高槻市は、新会館の土地や建物の固定資産税を免除するなど支援をする。
「3一銀」扇子人気
移転建設費用は13億円程度が見込まれる。資金は現会館の土地建物を売却するほか、CFでも集めることになった。ふるさと納税型のCFで高槻市が実施し、寄付金額に応じた記念品を連盟が準備するかたちで、大手サイト「キャンプファイヤー」で7月28日に始まった。
記念品のうち、最高額は300万円の「プレミアム指導対局」だが、スタート初日に渡辺明三冠(37)=名人・棋王・王将=との指導対局が売れた。ほか、豊島将之二冠(31)=竜王・叡王=、里見香奈女流四冠(29)=清麗・女流名人・女流王位・倉敷藤花=ら15人のトップ棋士から1人を選び、御上段の間で指導対局ができ、公式戦のように奨励会員による記録係が付く。対局後には、駒箱に棋士が揮毫した最高級の駒「盛上駒(もりあげごま)」がもらえる。
また、「記念御朱印帳」は豊島二冠や羽生善治九段(50)、谷川浩司九段(59)といった22人の棋士の直筆揮毫が入ったもので、20万円の20セットが用意されたが、こちらも初日に売り切れた。
最も多い150人以上の支援が集まっているのは、昨年の棋聖戦第2局で藤井棋聖が「3一銀」と指した局面をデザインした扇子だ。「AI超え」と話題になった一手で、扇子はこのCFでしか手に入らない限定品。価格は5万円に設定されている。
新会館で寄付者の名前が刻まれる「新会館寄付者銘板」も人気。大(50万円)、中(10万円)、小(5万円)の3種類がある。