金融

日本で「賃上げ」が進まない意外な理由 首相は意欲も…経済界から冷たい視線 (2/2ページ)

SankeiBiz編集部
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 賃上げを求めない労働者

 ただ、賃金の伸び悩みについては意外な要因も挙げられている。ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査部長は「日本の労働者はあまり賃上げを要求してこなかった」と指摘。その理由として「物価上昇のペースが緩やかなので労働者が賃金が上がらないことの痛みをさほど感じていない」と分析する。労使間で決まる賃金の水準に関して政府ができることは限定的で、賃上げを実現するには「国民の関心を賃金が上がっていないという事実に向けなければならない」との主張だ。

 日本の労働者の賃上げに対する姿勢については、日本総合研究所の山田久副理事長も「連合や産業別の組合は賃上げを掲げてきたが、賃金交渉する企業別の組合は雇用確保を優先し、賃上げを強く求めない傾向がある」と話す。

 山田氏は賃上げ実現のためには、政府が旗振り役となって経済の専門家を交えた第三者的な組織をつくり、目標とする経済成長を実現するために必要な賃上げ率を基準として提示することが必要だと提言。「根拠を持った賃上げの基準が示されれば企業側も応じざるを得なくなる」と解説する。

 また、賃上げには企業の収益力が大前提となることから、山田氏は消費者の購買意識を「良い物を安く」から「良い物を適正な価格で」へと変化させる社会的な取り組みも重要だと強調。政府は不当廉売や大企業の取引先に対する優越的地位の乱用の取り締まりにも力を注ぐべきだとする。さらに成長性の高い産業への労働者の移行を目的とした、職業訓練や再雇用支援の予算の大幅な拡充も必要だとし、これらの政策をパッケージとして打ち出すことの重要性を訴える。

 賃上げを実現するには、働き方や消費に関する国民の意識を変革する必要がある。「新しい資本主義」を掲げて総選挙を戦う首相は賃上げ実現の具体的なビジョンを示さなければ、経済政策の実行力を疑われることにもなりかねない。

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