コーヒーで世界を変えたい
故郷のコーヒー農業をめぐる実態を知ったのは、日本からグアテマラを見たことがきっかけだった。初の来日は18歳。旅行で訪れたことを機に日本の文化に惚れ込み、以来日本で暮らしているメレンさん。日本人にとって「グアテマラ=コーヒーの産地」というイメージが強いことを知り、日本で自身のコーヒーブランドを作りたいと故郷のコーヒー農園を視察した。そこで目の当たりにしたのがコーヒー業界の不公平な現実だ。「有名なコーヒー農園でも、フェアトレードの認証を受けているブランドでも、栽培農家の生産者たちは想像をはるかに超えた貧しい暮らしをしていた」とメレンさんは振り返る。
「小規模なコーヒー生産者が自分たちの手で栽培からコーヒー豆づくりまで行い、その豆をコーヒー消費の大きな市場である日本に直接輸出できるルートができれば貧困から抜け出せるのではないか」との思いからメレンさんが2017年に立ち上げた生産者団体が、企業名でもある「GOOD COFFEE FARMS」。自転車型脱穀機の導入をはじめ、上質な豆づくりのためのノウハウをレクチャーするなど、現地のコーヒービジネスの変革に取り組んでいる。「自分もチャレンジしたい」とメレンさんの下に集まったコーヒー生産者は200人。農園で働くスタッフの収入は加入前後で3~4倍に改善されているという。
さらに現地では制服の着用や朝礼など日本特有の就労文化も導入している。何より大切にしているのは日本流の規律だ。「規律があれば明るい将来に向けてチーム一丸となって取り組む姿勢が生まれる。時間もルールも守られるし、それぞれの責任感も生まれる」。農園内では日本語の「頑張りましょう!」が掛け声として飛び交う。
エルサルバドルやコスタリカ等の中米諸国にも事業を展開中で、今後はアフリカやアジア地域への拡大も視野に入れている。「このムーブメントを世界中に広げ、できる限り多くの生産者をサポートしていきたい」と意欲を語るメレンさん。「サステナブルな方法で作られた“GOODなコーヒー”が今ほど美味しく感じられる時代はない。『COFFEE CHANGING THE WORLD』(コーヒーで世界を変えよう)というスローガンを広めていきたい」と情熱を燃やす。
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