小型で乗り降りしやすい新たな移動手段として期待されている電動キックボードをめぐるルールが複雑化している。電動キックボードの法律上の位置づけはあくまで原動機付自転車(ミニバイク)扱い。一方、政府が認定する特例事業で使われる電動キックボードはトラクターなどと同じ小型特殊自動車とされ、しかも速度は自転車並みに制限されている。結果として右折時のルールが3通り存在するなど、利用者の混乱を招きやすい状況だ。警察庁は電動キックボードの交通ルール作りの検討を続けており、理解しやすい制度作りが必要とされている。
便利で手軽な移動手段
「購入される方は原付や電動アシスト自転車の代替品として使うケースが多い」。電動キックボードの製造・販売を手掛ける国内メーカーの担当者は自社製品の位置づけを、こんな風に説明する。
電動キックボードの用途は自宅から最寄り駅までの通勤、ちょっとした買い物などさまざまだ。キャンプ場まで車に積み込んで運び、到着後の移動手段として使うといった、レジャー要素の強い楽しみ方もされているという。
また、電動キックボードは折りたたんで自宅に持ち込めるなど、原付や電動アシスト自転車にはない利点もある。担当者は「駐輪場のないマンションの住人が手軽で便利な移動手段として購入するケースもある」と話す。
同じ場所でも異なるルール
ただ、電動キックボードは新しい交通手段であるが故に、曖昧な立場にあることも事実だ。
電動キックボードは道路交通法上は原付として扱われ、原付を運転できる免許を持ったうえで、法定速度の時速30キロで車道を走ることができる。また利用時にはヘルメットを着用し、止める場合は原付が止められる駐輪場を探すことが必要だ。個人が電動キックボードを購入した場合、このルールに従わなければならない。
一方、政府は交通に関する技術やサービスの進化を踏まえ、電動キックボードをヘルメットなしで利用できる特例事業を地域限定で認めている。事業者が街中の特設駐輪場に電動キックボートを多数配置し、スマートフォンのアプリで開錠するなどすれば自由に乗り降りできるサービスが中心だ。
この場合、電動キックボードの位置づけは小型特殊自動車とされ、原付免許では運転できず、普通自動車免許や二輪免許が必要となる。ただし最高速度は一般的な自転車の走行速度と同程度の時速15キロに制限され、ヘルメットの着用は任意。自転車レーンを走ることができる。
特例事業は東京都では渋谷区など8区と立川市で実施中。警視庁は「特例事業が行われている地域では、特例事業の電動キックボードはヘルメット着用が任意だが、個人購入の電動キックボードならヘルメット着用が義務となる。同じ場所でも従うルールが違う」と説明する。