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苦境のパナソニック 物流DX事業は吉と出るのか (1/2ページ)

 パナソニックが、企業のサプライチェーン(供給網)の効率化を支援するシステム事業に力を入れる。顧客企業の生産性向上を図るため、強みであるカメラやセンサーを用いた画像認識技術に、人工知能(AI)などのソフトを組み合わせたサービスを提供する。今後は9月に買収した米ソフトウエア大手、ブルーヨンダーのノウハウも生かし、ITを活用して事業構造を抜本的に改革するDX(デジタルトランスフォーメーション)が進まない現場への需要を掘り起こしたい考えだ。

 カメラやセンサーで効率化

 大阪府茨木市にあるパナソニックの彩都パーツセンター。8万種類以上のパソコンなどの交換部品を保管し、月2万6千件の出荷に対応するこの物流施設では、従業員が無駄のない動きで、無数に並んだ在庫棚から商品を取り出す作業から梱包までをスムーズにこなしていた。

 天井に設置された360度カメラやセンサーが、従業員の仕分け作業や動線、商品の動きまでをつぶさにとらえていた。そのデータをAIで分析し、従業員一人一人がどのような作業にどれだけの時間をかけているのかなどを計測し、可視化できるようにしている。

 1日の作業量や生産性などもグラフ化され、パソコン上で確認することができる。同社現場コンサルティング部の一力知一(いちりき・ともかず)部長は「作業の遅れは個人の問題ではなく、現場の環境や仕組みが原因と考える。それを見つけるためのシステム」と説明する。

 センターではこのシステムを平成30年から導入、作業の効率化につなげてきた。AI分析で、ある従業員の梱包作業の効率が落ちた際、映像で実際の作業状況を確認したところ、梱包用の段ボールが作業場所から遠くに配置されていて補充に時間がかかっていたことが判明。段ボールの置き場所を変えて改善した。

 センターでは令和元年、人件費などのコストを前年比で約1割削減することに成功している。「従業員が経験則や勘に頼って無意識的にやってきた工夫を可視化して、誰でもできるようにするのが重要」と一力部長は話す。

 莫大なコストが足かせ

 パナソニックがこのような物流・流通のDXに取り組み始めたのは平成28年度から。30年には、現場プロセスイノベーション事業を立ち上げ、ヤマト運輸にも仕組みを提供してきた。今年7月には、企業向けに物流や流通現場の課題をAIなどを活用して解決するサービス「現場最適化ソリューション」を開始。カメラやセンサーなどとセットでシステムを外販する。

 来年度までに勤務シフトを自動作成する「シフト最適化」や、倉庫内の人や機械の動きを分析する「動線分析」などのサービスを順次提供していく計画で、現在、複数の企業が興味を示し、契約に向けて話を進めているという。

 今、物流・流通のDXは各企業の大きな課題となっている。

 クボタは世界各国にあるグループ会社との生産・流通管理システムの統合を進める。従来は拠点とする国や地域、グループ会社の業態ごとに最適化された管理システムを導入していた。ただ、それではデータが共有できないため、たとえば日本国内の生産拠点では、米国の販売状況を1週間単位でしか把握できなかった。2年後をめどに順次統合システムの運用を開始する予定で、統合が完了すれば1日ごとの生産や販売状況を確認できるようになる。担当者は「米国での販売が順調なのに生産が間に合わず、需要を逃してしまうというようなことがなくなる」と期待する。

 一方、国内メーカーの多くが物流や流通のDXを進められていない。ある電機メーカーの担当者は「導入に必要なコストが莫大であることや運用に必要なIT人材の雇用、育成が難しいことが足かせになっている」と明かす。広く海外に展開している企業が物流の体制やシステムを構築し直す場合、数百億円規模の費用がかかるため、容易に踏み出せないという。

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