衛星「ひとみ」、運用停止も視野 JAXA 別の打ち上げに影響も
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8日、軌道上でトラブルが起きたエックス線天文衛星「ひとみ」について、運用停止も視野に入れた検討を始めた。2016年度中に予定する別の科学衛星の打ち上げ計画に影響が出る可能性もあるとしている。
同日までの分析で、姿勢制御用の装置が壊れてガスが噴出するなどの異常が起きた可能性があることが判明。機体は約5秒に1回の速さで激しく回転しており、遠心力によって太陽電池パネルの一部や、観測に必要なアーム状の伸展装置が脱落したとJAXAはみている。
JAXAの常田佐久理事は同日の記者会見で「重大な事態になった」と話した。米軍がレーダー観測で捉えた10個以上の物体は、衛星本体や脱落した部品の破片らしい。ひとみは伸展装置を含め全長14メートルだが、すばる望遠鏡の観測では、衛星本体は数メートルの大きさしか残っていないとみられる。
3月29日以降は通信が全くできない状態が続く。常田氏は「予定通りの観測を始めることが難しくなり申し訳ない。復旧の望みは捨てていないが、場合によっては最悪のことも考えなければならない」と述べ、運用停止の可能性を示唆した。
JAXAは16年度に別の科学衛星を打ち上げる予定だが、ひとみと共通の部品が使われていると同じトラブルが起きる懸念があるため、失敗原因の究明を急ぐ考えを明らかにした。
ひとみは試験運用中の3月26日に機体が破損したとみられ、正常な通信ができない状態に陥った。
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