羽田空港滑走路のデータ改竄 東亜建設工業、耐震工事の薬液量など4点
中堅ゼネコン「東亜建設工業」(東京)は6日、同社が担当した羽田空港C滑走路の地盤改良工事でデータを改竄(かいざん)し、国土交通省に虚偽の報告をしていたことを明らかにした。同社によると、偽装があったのは地震時に滑走路の液状化を防ぐ耐震化工事。土中に注入する薬液が予定量の5.4%しか注入されなかったにもかかわらず、仕様書通りに施工されたようにデータを改竄し、虚偽の報告をして完成検査を受け、引き渡していた。国交省関東地方整備局は、通常利用に問題はなく滑走路の運航制限はしないとしている。
同日、横浜市内で記者会見した同社の松尾正臣社長は「関係者にご迷惑とご心配をおかけし、心よりおわびします」と謝罪。当初予定の6月株主総会に先だって社長を辞任し、代表権のない相談役に退く意向を示した。
問題の工事は、滑走路の脇から穴を掘って薬液の注入を行う同社が開発した「バルーングラウト工法」とよばれる工法で、平成27年5月から同28年3月に行われた。
薬液を注入する管を地中に埋めた長さ▽薬液の注入量▽施工後の地盤強度-などの4点で偽装があった。管を通すため穴を開ける際、地中のコンクリート片などに当たり予定位置に達しなかったことや、薬液が浸透しにくい土質だったことなどが原因という。地盤強度は施工前とほとんど変わっていないという。
4月中旬に工事に携わった2次下請けの作業員を介して施工不良があったとの通報が同社にあり、4月21日に調査を指示。27日に施工不良の疑いがあることを国交省に申告した。
調査の過程で、施工責任者の東京支店前支店長は「プレッシャーから『失敗できない』と現場の人間にも言い続けてきた」と話しているという。これに対し、松尾氏は「前支店長が明らかに指示したわけではないと思っている。最終的には調査を通じて明らかにしていきたい」と述べ、具体的にどの段階で偽装が行われていたかについては「調査している」と話すにとどめた。
同工法は福岡空港(福岡市博多区)など11施設で行われており、同社は他に問題がなかったか調査を進めているほか、原因究明と再発防止に向けた調査委員会を設置する。
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【用語解説】東亜建設工業
「臨海工業地帯開発の父」と呼ばれた事業家の浅野総一郎が明治41(1908)年に創業し、神奈川県などを流れる鶴見川河口の埋め立て事業を手掛けた。大正3年に鶴見埋築株式会社を創立、合併などを経て、昭和48年に東亜建設工業株式会社に社名変更する。その後、道路や橋梁(きょうりょう)、宅地造成工事などにも進出。ベトナムのコンテナターミナル整備、インドネシアの石炭火力発電所の土建工事にも携わる。同社ホームページによると、平成26年度の売上高は1988億円。
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