国立西洋美術館、世界文化遺産登録へ 諮問機関が勧告
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の日本政府代表部に17日入った連絡によると、ユネスコの諮問機関、国際記念物遺跡会議(イコモス)は、フランスや日本など7カ国で共同推薦した国立西洋美術館(東京都台東区)を含む「ル・コルビュジエの建築作品」を世界文化遺産に登録するよう勧告した。7月10~20日にトルコ・イスタンブールで開かれるユネスコ世界遺産委員会で正式に決まる見通し。
2009年と11年の2回の審査でいずれも登録に至らず、3度目の挑戦に期待がかかっていた。正式に決まれば、他国との共同推薦による初の登録となる。昨年の「明治日本の産業革命遺産」(福岡など8県)に続き国内16例目、東京都では初の世界文化遺産となる。自然遺産も含めた世界遺産全体では国内20例目。
フランスを拠点に活躍した近代建築の巨匠、ル・コルビュジエ(1887~1965年)は、小住宅から工場やビルまで幅広い創作活動を展開し、20世紀の建築や都市計画に大きな影響を与えた。しかし、過去の審査で「人物は評価できない」などとされ、対象建築を絞り込んで近代建築運動への貢献を強調する内容に見直した。
国立西洋美術館は、ル・コルビュジエの設計による国内唯一の建築。1階の壁を取り払った「ピロティ」や「屋上庭園」などコルビュジエ建築の特徴を備え、展示品の増加に伴い巻き貝のように渦巻き状に増床できる「無限発展美術館」の構想の数少ない実現例として世界的に評価されている。昭和34年にオープン。平成19年に国の重要文化財の指定を受けた。
世界文化遺産の審査は各国年1件に制限され、「ル・コルビュジエの建築作品」はフランス枠での推薦。日本は「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」(長崎、熊本)を推薦していたが、イコモスから推薦内容の不備を指摘されいったん取り下げた。政府は1月、2017年の登録を目指して「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」(福岡)を推薦した。
世界遺産は、貴重な遺跡や生態系などを人類共通の財産として後世に伝えるため、世界遺産条約に基づきユネスコが登録する。文化、自然、複合の3種類がある。各国は登録可否が決まる前年の2月1日までにユネスコに正式な推薦書を提出。イコモスが現地調査などを経て可否を勧告する。勧告には(1)登録(2)追加情報の提出を求める「情報照会」(3)登録延期(4)不登録-の4つがあり、登録勧告が出れば通常、世界遺産委員会でそのまま正式決定される。
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