“パンチラスポット”の京都駅、盗撮犯うじゃうじゃ… 犯行見抜く「プロの目」
国際観光都市・京都の玄関口であるJRと近鉄の京都駅(京都市下京区)で、盗撮事件が多発している。今年以降、府迷惑行為防止条例違反容疑で摘発した盗撮件数は6月上旬までに18件に上り、すでに昨年1年間の摘発数の17件を超え、おおむね2倍のハイペースだ。背景にあるのは、京都府警鉄道警察隊による取り締まり強化。インターネットの検索サイトに「京都」「パンチラスポット」と打ち込むと、京都駅を挙げる悪質な書き込みもある。卑劣な犯罪の横行に危機感を募らせた鉄道警察隊は、駅構内で被害が頻発している場所に制服・私服の警察官を重点的に配置。大勢の人が行き交う中から盗撮犯の不審な動きをプロの目で見抜き、摘発を重ねているのだ。ただ、女性が被害に気付かないケースも多く、摘発は「氷山の一角」とされる。女性自身が警戒心を高める必要がある。
鉄道警察隊員が目撃
「達成感を味わいたかった」
JR京都駅で女性のスカート内を盗撮したとして、迷惑行為防止条例違反(卑わいな行為)容疑で逮捕された会社員の男(46)はこう供述した。
男は6月7日午前9時15分ごろ、京都駅構内のエスカレーターで、出勤途中だった女性会社員(31)の後ろにつき、小型カメラをつけたサンダルをスカートの下に差し出したとされる。
男は事前に駅のトイレで、足の甲とサンダルの間にペン型の小型カメラを仕込み、エスカレーターの段差を利用してサンダルに空いた穴から盗撮を試みたという。しかし、府警鉄道警察隊の隊員が犯行を目撃、現行犯逮捕した。
鉄道警察隊の隊員は盗撮被害が頻発している京都駅構内を警戒中だった。男が小型カメラと一緒に持っていたノートパソコンを詳しく調べたところ、スカートの中を撮影した他の動画も残っていた。
同日午後3時半ごろ、駅構内のエスカレーターで、今度はスマートフォンのカメラで女性のスカート内を盗撮したとして、府迷惑防止条例違反容疑で京都府内の私立大学に通う男子学生(18)が現行犯逮捕された。こちらも犯行を確認したのは鉄道警察隊の隊員だ。
この学生のスマホの中にも、スカートの中などを撮影した動画が残っていた。男子学生は「女の子の履いているパンツを見たかった」と容疑を認めている。
京都で盗撮犯横行
盗撮の被害は京都駅構内のほか、駅ビルの大階段やエスカレーターなどでも報告されている。インターネットサイトで「パンチラスポット」などと紹介されており、サイトを見て訪れる盗撮犯も多数いるとみられる。
千年の都・京都を訪れる国内外からの観光客は年間で5千万人を超え、カメラやスマホを持ち歩いたり、撮影のため構えたりしても自然で目立たない。旅行という非日常的な開放感から周囲への警戒が緩み、盗撮されても気付きにくいため盗撮犯が横行している側面もあるようだ。
玄関口の京都駅と同様、世界遺産・清水寺(京都市東山区)をはじめとした観光地も、ネット上でパンチラスポットとして紹介されていたのは記憶に新しい。
こうした盗撮被害を少しでも防ぐため、京都府警は「検挙に勝る防犯なし」として摘発に力を入れており、京都駅では鉄道警察隊がその役目を担う。
隊員「すぐに気付く」
鉄道警察隊は、京都駅構内で盗撮が頻繁に確認された場所やその周辺に制服・私服の隊員たちを重点的に配置。日々、目を光らせている。
警戒にあたる隊員の一人は、盗撮行為に及びそうなケースについて「注意して見ていればすぐに気付く」と打ち明けた。
京都駅では毎日、多くの人が行き交う。漫然と見ているだけでは盗撮犯を発見できない。摘発の経験を積み重ねてきたプロが注目するのは、人の流れだ。
一定の流れの中で不自然な動きをする人物。さらにターゲットを探すかのように駅構内を何時間も歩き回ったりしている人物は特に要注意だ。そうして怪しい人物が浮かぶと注意深くマークし、実際に犯行を確認すると摘発に動く。
プロの目で捕捉された盗撮犯は逃げられない。カメラやスマホ、あるいはパソコンの中から盗撮画像という「動かぬ証拠」を押さえられると、もはや言い逃れも利かない。
京都駅で摘発件数が多いのは構内の上りエスカレーターだ。最近は、動画撮影モードにしたスマホを自分の膝の上に乗せて、女性のスカートの中に差し出す巧妙な手口が目立つ。
府警によると、被害にあった女性のほとんどは犯行に気づいていない。そのため、被害の相談件数は痴漢などに比べると少ないという。
「常に警戒心を」
何とか盗撮被害を抑えたい-。府警では摘発の強化だけでなく、高校などに警察官を派遣し、被害に遭いやすい女子高生に対する啓発活動を進めている。痴漢や盗撮などの被害から自ら身を守る術を知ってほしいとの思いからだ。
6月8日、京都市西京区の私立明徳高校で行われた対策講座には、1年の女子生徒ら約160人が参加した。府警鉄道警察隊の隊員たちが、女子生徒に電車内で痴漢に遭った際の対処法に加え、駅での盗撮行為の実態を説明した。
駅のエスカレーターなどで多発する盗撮の手口を詳細に解説。盗撮写真を専門に買い取る業者もあるとしたうえで、写真がネット上で拡散していく現代社会特有の怖さも熱心に説いた。
スマホに夢中になっていたり、イヤホンをつけていたりして、周囲の状況を把握できないときは「狙われやすい」と強調。エスカレーターに乗るときは、手やかばんでスカートのすそを押さえたり、少し斜めを向いて周囲を警戒するといった対策も紹介していた。
手を変え品を変え、巧妙かつ執拗にスカート内を狙う盗撮の手口が説明されると、不気味な盗撮犯の“影”を身近に感じたのか、女子生徒から「気持ち悪い」といった声も上がった。
こうした実態を知ることが日々の警戒につながり、卑劣な盗撮犯からわが身を守ることに結びつく。
府警幹部は「実際に摘発できるのは氷山の一角かもしれない。心がけ一つで被害を少しでも防ぐことができるので警戒心は常に持ってほしい」と話した。
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